薄れていくキミへの想いと、寂しさの分岐点
ずっと一緒にいたキミは、もう違う場所へ行ってしまった。だから、毎日の中で、必死で寂しさに慣れようとしてがんばってみた。
だけど、それってなかなか難しくて、どんなシーンにいても、ついついキミのことを思い出してしまう。
一方的にフラれたから、別れたことを引きずらないわけがない。本当は今だってキミのことを心のどこかで想っている。そして、それは自分が一番わかっている。
いろんなことをきっかけに、キミのことを考える。
「キミだったら、こんなことを言うはず」
「もし、贈るならこんなもの」
「これならきっと満足するはず」
考えなくてもわかることはたくさんできたれど、今はもうその想いも届かないくらい遠くへ行ってしまったキミの気持ち。
いつまでもくよくよして悲しんでいても仕方ない。だから、僕は新しい時間を歩きはじめることに決めた。
ある日の、僕はキミの知らない誰かとドライブに出かけた。とっても天気のいい日の午後。
「少し疲れたね、ちょっと休憩しようか」
そう言って、コンビニの駐車場に車を停めた。
「何か飲み物買ってくるね」
そう言って僕はひとりコンビニに入っていく。店内を一周し、ペットボトルを2本手に取った。そして、レジへ並んでいる時に、ふと目に入ったスイーツのコーナー。
(ついでに何か買っていってあげよう)
そう思ったんだけれど、そのまま手を商品に伸ばすことはなかった。いや、正確には手の伸ばせなかった。だって、何を買っていいのかわからなかったから。
(キミなら、きっとこれが好き)
こんなふうにキミを想う日常は、もう戻ってこない。気持ちの中で、なんとか一区切りつけたつもりでいるけれど、やっぱり寂しい。
そのままペットボトルだけを抱えて車に戻る。
ありがとう
助手席に座る彼女にペットボトルを手渡す。本当に素直な笑顔で「ありがとう」って言ってくれた。
そして、その時の僕の正直な気持ち
(もし、こうして飲み物を手渡す相手がキミだったら・・・)
なんて、思わない。今もキミが近くにいたら、きっと僕はずっと苦しんでいただろうから。
どうしてこっちを向いてくれないんだろう?
いつか離れて行ってしまうんじゃないか?
そんな想いと一緒に過ごした数年間。付き合っていた時間の半分は、愛情。そして残りの半分は心配と不安で作られていた。
自分がいちばん愛した人は、自分のことを一番傷つけた人でもあった。
悲しいけれど、そういう事。
キミがいなくなって数か月。色々と寂しいことはあったけど、それでも僕の中で、キミはいちばんだった。
次に出会う人、次にそばにいる人。きっとキミの影を追ってしまう・・・。そう考えていたけれど、ある時ふと気がついた。
(あんな想いは二度としたくない。あんな付き合いは絶対に嫌だ)
って思っている自分に。
じゃあ、これからはどんな時間を過ごす?どんな想いを相手に渡す?
答えは
「キミとは真逆の人と一緒にいたい」
君が去ったあと、もう一度、一緒にいられるのがいちばんの幸せ。最高のハッピーなエンディング。そう思っていたんだけれど、そうじゃなかった。
本当は、まったくの逆。僕が求めているのは、キミじゃなかった。
僕のことを特別だと思って欲しかった、少しだけでいいから。
多くを望んだわけじゃない。僕が何をしてあげようが、何をプレゼントしてあげようが、見返りなんて求めなかった。
たった一つ、僕が何かをしてあげたいって思う、その気持ちを受け取ってほしかっただけ。
でも、その想いはキミの気持ちには届かなかったみたい。いつしか、普通が当たり前になってしまったから。
ずっとずっと、これからもキミのことをいちばんに想っている。そんなふうに考えていた。
だから、きっと次に僕のそばで笑っている人も、キミと似ている人なんだろうって。
変わっていくキミ、変わらないキミ
僕と一緒にいる時間の中で、キミはだんだんと変わっていってしまった。
最初は本当に素直だったし、天真爛漫を絵に書いたような人だったのに。いつしか、隠し事も増え、駆け引きが上手くなって、したたかさも身につけた。
気がつけば、僕の彼女はこんなに素敵なんだって思うより、こんなことをしてくれる彼女であって欲しいって考えることのほうが増えてしまった。
キミのイメージは僕と出会ったころのままだったから、それが本当に悲しかった。これは間違いない事実。
友達に言われた。
「新しい彼女ができて、その人のことを大切に思ったら、そんな気持ちは、すぐに消し飛んでしまうでしょう。あなたの性格なら」
たしかにそうかも、と思った。
新しい恋人ができたとしたら・・・。
でも、それは想像とは違っていた。だって、新しい恋人がいない今でも
僕が求めているのは「キミと正反対のヒト」
いちばん愛したあなたのことを、もう受け入れられない。
寂しさの分岐点がはっきりと見えてしまった。
寂しいけれど、ありがとう。