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可愛い王子様①

響、ちょっと大事な話がある。

そう言われて仕事終わりに友達のユキとカフェで待ち合わせ。

大事な話って何?

1人で聞くのが怖すぎた私は、仲のいい先輩ユイカを呼んだ。何か傷つけることしたのかな。絶交って言われたらどうしよう……ソワソワしながらいつものカフェに向かう。

味がしないカフェラテを飲みながらユイカと待っているとユキが現れた。

ユキが話終わると同時に、私はこらえていた涙が止まらなくなった。好きだった彼が、実は他のたくさんの女の子と関係を持っていたという話だった。

もう男の人は怖い。そう思った私は、家に帰って電気も付けずに座り込んでしまった。ただただ涙が止まらない。私は素直に恋愛したいだけなのに。

そのとき、突然ケータイが光った。こんな夜中に誰?ってケータイを見ると何日か前に既読スルーしてた男の子からだった。だいぶ前にSNSで繋がった彼は、いきなりタメ口で印象も悪かったので早々とメッセージをスルーしていた。そんな彼が「久々にお酒飲んでたー」というどうでもいい報告だった。

しかし、今の私にとっては全く関係ない人とのやり取りが心の支えになった。そして気づいたら私は彼に「よかったら今から電話しませんか?」と誘っていた。電話苦手なんですと言われたにも関わらず、大丈夫大丈夫と言いながら私は彼と電話を繋いだ。

初めて声を聞いた。優しい声で何も考えずに話せて気づいたら長電話してしまった。カーテンの向こうから少し光が見えていた。早く寝ないと。この後仕事なのに……

それから電話の彼と毎日やりとりをするようになり、ついに会う約束をした。年齢、話し方、最寄り駅……そんな情報しか知らない。どんな顔してるんだろ。身長は高いのかな。どんな服着てくるんだろう。期待より不安の方が大きい私は電車に乗って待ち合わせ場所へと向かった。

着きました!メッセージを送り、改札を出る。そこには想像していたよりも若くてモテそうな雰囲気の彼が立っていた。それが彼との初めての出会いだった。

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