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ストーカー被害の話④

恐怖から一夜明け。
次の出勤日は全員集合の日だった。

ギャル姉さんは
『なんですぐ私に電話しないの!』と怒り
同期ギャルは
『今日からまた一緒に帰りましょ!』
と慰めてくれ
店長は
『そいつもう出禁だな。』
と呟いていた。

いやいや、お騒がせしました、、、
とほほ。。
といったやりとりも終わり
さて、今日も営業開始!
と同期ギャルが店のシャッターを開けた瞬間

『え?あれ…その人じゃないですか?!!』

と慌てた様子で小走りに店内に帰ってきた。

店の正面は大きなガラス張り
外が良く見えるのだが


店の前の道路を隔てた、向かいの駐車場に
間違いなく例のおじさんが
何かを持って立っているのだ…

ただこちらを見ている。
それだけでこんなにも怖いことがあるだろうか。

ギャル姉さんは怒り心頭で
『ちょっと話してきます!』
と外に出て行こうとしたが店長に止められて
『危ないから刺激しない方がいい』
としばらく様子を見ることになった。

とにかく仕事に集中しようと午前の仕事をこなす。



お客様もひと段落し
ふと店の外を見ると

おじさんが
徐々に近づいている、、、。

時間をかけてゆっくりと


視界から消えていた時間もあったので
恐らく何度もうろうしながら

例のおじさんが、いよいよ店の正面まで来ていた。 

手にはなぜか
枯れた木が生えた鉢植えを持っている。


いよいよ只事ではない
と全員が確実した次の瞬間


自動ドアが開き、おじさんが店内に入ってきた。



同期ギャルはとっさに私をカウンターの後ろに引っ込め
店長はセコムのボタンを握り締め
ギャル姉さんがおじさんに
つかつかと歩み寄り話し掛けた



『朝からずっと店の前にいらっしゃいましたけれど
ご用件は何ですか?』

するとおじさんはカウンターの後ろにいる私を見て


本当に、ニコニコと


「私、この度そこの〇〇さんと
結婚することになったんです。」

「婚姻届も持ってきました」

「それで、職場の皆様にご挨拶をと思って
これを持って来たんです」

そう言って枯れた木が生えた植木鉢を差し出した。

「今までありがとうございました」

そう言って私を見ながら笑ったおじさんの顔は
今も脳裏に焼き付いて離れない。


この会話が始まった瞬間、店長は警察に通報。

ギャル姉さんはブチ切れで

『あなた、この子のこと
ずっと待ち伏せしたりしてましたよね?』

『迷惑なの分からないんですか!!?』

『結婚の話も妄想でそういうこと言うの
やめてください、迷惑してるんです。』

とガンガン言ってくれたが
おじさんは全く響かないという様子で淡々と

「いや、でも結婚するんです」
「今までありがとうございました。」
「結婚したら仕事は辞めさせますので
よろしくお願いします。」 と繰り返す。


ホラーだった。

怖すぎて目を離すことすら出来ない。


時間がコマ送りのようにゆっくり進んだ。


何分経っただろう
次の瞬間サイレンの音が聞こえ
パトカーが何台も集まり
バタバタバタっと何人もの警察官が走ってきた

その瞬間
おじさんがバッと走って店の外へ逃げた

店長とギャル姉さん、同期ギャルも外へ出て行く


私は少し遅れて外へ出てみると

駐車場の壁際で何人かの警察官に
ドラマの様に後ろ手にされて
パトカーに連行されるおじさんの姿があった。

とっさに私は目を逸らした。

おじさんと絶対に目を合わせちゃいけない
そう思ったから。







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