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夜鳴きそば

雪がちらつく、夜の温泉街。呼吸をするたび、白い湯気が暗闇の中に吸い込まれていく。

宿に戻り温泉へ。冷えた体も温まり、部屋に戻ろうとした時「見てこれ、夜鳴きそばだって」と友人が立ち止まった。

この宿には、夜食として半玉のラーメンを振る舞うサービスがあるらしい。

私たちは迷わず食事処に入った。

囲炉裏を目の前にして座り、ラーメンをすする。時計は23時を指していた。

ふだんは後ろめたさを感じる夜食も、この時ばかりは気にせず食べる。やっぱり、夜に食べるラーメンは格別だ。

「おいしいねえ」

友人と顔を見合わせた。2人とも大粒の汗をかいている。温泉に入って温まったところに熱々のラーメンを食べたのだから当然だ。

旅をしていると、普段なら気にしてしまうような細かいことも、どうでも良くなることがある。

その瞬間が心地よくて好きだ。

私たちはもっと、細かいことを気にせず、楽しさや幸せを味わってもいいのかもしれない。

最後まで読んでくださり、とても嬉しいです!ありがとうございます。