絵のない絵本

わたしは、成長してからも絵本やファンタジーの世界観がずっと好きで、大人になった今でも絵本や童話を読み返すことが多い。

きょうは、大人でも子どもでも楽しめる童話を紹介しよう。
マッチ売りの少女やみにくいアヒルの子の有名なアンゼルセン童話のひとつ。

「絵のない絵本」written by アンゼルセン

世界中を見て廻る”月”が語るショートストーリーたち。
いろんな国、様々な人が織りなす、短編物語集。

日常の一コマに忘れていたことを思い出させてくれるそんなおはなし。


あらすじ
このお話は、貧しい絵描きが故郷を離れ暮らしているある晩からはじまります。
寂しくて窓辺に立っていると、とてもよく知っているなつかしい顔が見えました。それは月です。

絵描きが月に投げキスをすると、月がまっすぐに部屋に差し込んできて、これから毎晩くると約束してくれました。
月が絵描きの部屋にいられるのは、ほんのすこしの時間。

月が語る”千夜一夜物語” 月は言う「わたしの話すことを絵におかきなさい。」
絵描きはいく晩もいく晩も月が語る話を書いていった。


わたしが特にお気に入りの一話を紹介する。
最終話の33夜は小さな幸せに気が付かせてくれるハートフルストーリ。

「わたしは子どもが大好きです」と、月が言いました。

「小さい子は、ことにおもしろいものです。
子どもがひとりで、やっとこ着物をぬごうとしているのを見るのはとっても愉快ゆかいです。
最初に、裸はだかの小さいまるい肩かたが着物の中から出てきて、その次に腕うでがするっと抜ぬけでてきます。それから、靴下を脱ぬぐところも見ます。
白くて固い、かわいらしい小さな脚あしが現われてきます。ほんとにキスをしてやりたいような足です。そしてわたしは、ほんとうにその足にキスをしてやるのです!」と、月が言いました。

「今夜わたしは、どうしてもこのことを話さずにはいられません。
今夜わたしは、一つの窓をのぞきこみました。向い側に家がないので、その窓にはカーテンがおろしてありませんでした。
そこには子どもたちが、姉妹しまいや兄弟たちがみんな集まっているのが見えました。その中にひとりの小さい女の子がいました。
この子はやっと四つになったばかりでしたが、それでもほかの子どもたちと同じように、『主の祈り』をとなえることができました。
そのため母親は、毎晩その子の寝床ねどこのそばにすわって、その子が『主の祈り』をとなえるのを聞いてやるのでした。そのあとで、その子はキスをしてもらうのです。そして母親はその子が眠ねむりつくまで、そばにいてやります。でも小さい眼めは閉じたかとおもうと、すぐに眠ってしまいます。

今夜は、上のふたりの子がすこしあばれていました。ひとりは長い白い寝巻を着て、片足でピョンピョン跳はねまわりました。もうひとりは、ほかの子どもたちの着物をみんな自分のからだに巻きつけて、椅子いすの上に立ちあがり、ぼくは活人画だぞ、みんなであててみろ、と言いました。三番目と四番目の子は、おもちゃをきちんと引出しの中へ入れました。もっともこれは、そうしなくてはいけないことですけども。
母親はいちばん小さい子の寝床のそばにすわって、いまこの小さい子が『主の祈り』をとなえるから、みんな静かになさい、と言いました。
わたしはランプごしにのぞきこんでいました」と、月が言いました。

「四つになる女の子は寝床の中で、白いきれいなシーツの中に寝ていました。そして小さい両手を合せて、たいそうまじめくさった顔をしていました。いましも『主の祈り』を声高こわだかにとなえているところだったのです。
『あら、それは何なの?』母親はこう言って、お祈りの途中でさえぎりました。『おまえはきょうもわれらに日々のパンを与あたえたまえと言ってから、ほかにも何か言ったのね。お母かあさんにはよく聞えなかったけど、それは何? お母さんに言ってごらんなさい!』
――すると、女の子は黙だまったまま、困りきった顔をして母親を見ていました。

『きょうもわれらに日々のパンを与えたまえと言ったあとで、おまえはなんて言ったの?』
『お母さん、怒おこらないでね』と、小さな女の子は言いました。『あたし、お祈りしたのよ。パンにバターもたくさんつけてくださいまし、ってね!』」

                          引用元:青空文庫      


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

最後まで、ご覧いただきありがとうございます。 お気軽に感想・コメントもらえると嬉しいです^^ もし間違いや勘違いがあればご指摘くださいませ。 サポートは、新しい経験のために使わせていただきます。