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謎解き・バナナフィッシュにうってつけの日05「ポップ」


 dig フカボリスト。口がわるい。


 e-minor 当ブログ管理人eminusの別人格。


☆☆☆☆☆☆☆


 どうもe-minorです。


 digだよ。


 今更だけど、「バナナフィッシュ」の着想の由来は、“go bananas”というスラングからだと見ていいのかな。


 だと思うよ。


 手持ちの英和辞典には、“go bananas over ~”で「~に熱狂する,~に熱を上げる」と出てるんだけど、“go bananas”だけで「おかしくなる」って意味になるみたいだね。"go crazy"と同義になっちゃってんだ。ググったらどっさりヒットしたよ。


 この短編にインスパイアされた吉田秋生のマンガ『BANANA FISH』も、そういうノリで使ってるわけだろ。


 『ナイン・ストーリーズ』を最初に読んだのは高校の時だけど、「バナナを貪り食う魚」ってイメージにはいかにも奇異な印象を受けたね。バナナ食べる魚って変でしょやっぱ。その感じを当時はうまく言葉にできなかったんだけど、後から思うとあれは「キッチュ」というのが適切だったのかな。「俗悪」とか「いんちき」とか「安っぽい」とか……ただそこまで言っちゃうと言いすぎで、「マンガチック」くらいがちょうどいいのかもしれない。バカげてるけど、そんなにもベタではなくて、小さじ1杯ぶんくらいスパイスが効いてて……


 まあポップだわな。


 ポップか。うん。「フォニイ」って言葉は馴染みが薄いし、そう言っとくのがいちばんいいか。それでいうと、初期のサリンジャーの持ち味はポップなとこだと思うんだな。ライ麦畑で子どもが端っこから転げ落ちないように捕まえるキャッチャーだって、ファンタジックっていうより、やっぱりポップな感じでしょう。


 まあアメリカ的ではある。ヨーロッパの作家には思いつかんだろうな。


 そういえば、集英社文庫から中川敏訳で出てた『九つの物語』は佐々木侃司さんのイラストが表紙でね。クセが強いからじきに差し替えられちゃったんだけど(笑)、意外とこのカバー絵の世界観が初期のサリンジャーにはふさわしいのかなと思ったり。

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 これ昔「洋酒天国」のイラスト担当してた人だろう。柳原良平と一緒に。画風が似てるよ。


 たしかに似てる(笑)。ちなみにここでは「バナナフィッシュにもってこいの日」になってるんだけど、ポップっていえば、その次に収録されてる「コネチカットのひょこひょこおじさん」って、原題が「Uncle Wiggily in Connecticut」なんだよね。「アンクル・ウィギリー」ってわりと有名なキャラクターなんでしょ、ウサギの。


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全13回にて完結しています。

サリンジャーの短編「バナナフィッシュにうってつけの日」の謎を対話形式で解読。

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