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71.第二弾 発送しています ~過去の遺物にするな~


自虐と徒労と罪悪感を払拭してくれたのが、電話越しの見知らぬおじさんの声だった。
「過去の遺物にするな」と、諭してくれた。

あの電話が、夢だったと言われたら、そうかもしれないと思う。
会ったこともないおじさんの声。

天啓のようだと感じた。

「過去の遺物にするな」

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昨日、『手のような雨』と、ご自身のジャイアン・リサイタルの交換及びそのことを書かせてほしいという企画に賛同してくださったかたへの、第二弾の発送が終了した。
ありがとうございます。

同じ年の12月に開催した「物語の森」のDMが20枚残っていたので、同封した。
しらさわゆうこさんのあたたかいイラストの世界。
ご自身の物語の森へと導かれる冬の夜をすごしていただけたら…… という祈りをこめて。

コメント欄に「欲しい」と書いてくださっていたかたには、ご連絡をして、ご住所を教えていただいた。

希望したのに、連絡がないというかたがいらっしゃったら、メッセンジャーでご連絡ください。

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第一弾のときに感じた封筒に宛名を書いているとき、訪れたことのない都道府県がいくつもあり、〈日本の都道府県地図を用意して、印をつけよう〉と思ったので、やってみた。

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発送作業にあたり、一緒にやるひめ神を引くと、このはなさくやひめだった。
ライフワークである「名前のことだま🄬」で使っている「五十音カード」を引いてみると、「さ」

「さ行」は「風のことだま」と言われている。
このはなさくやひめの「このはな」は「さくら」のこと。さくらの開花は、「さ」の神様が山から里へおりてきたことを知らせるしるしだ。
し。

『手のような雨』が、自分の部屋から、日本の各地へ、旅立っていく。
もう、ずっと部屋の中で在庫のままだと思っていたのに。

「過去の遺物にするな」と、顔も名前も知らない人から言われたのは、2016年の誕生日の朝7時30分にかかってきた電話だった。日曜日だったので、まだ布団の中だった。

「知人の家に泊まりに来ていて、『手のような雨』を見せたら、すごく気に入ってくれたので、あげてもいいか?」という内容だった。

「その人に代わるね」と言われて、顔も名前も知らない人から

「いい歌がいっぱい載っている」

とほめてもらった。

ちょうど前日の夜、部屋の隅に置いた箱を見て、
(『手のような雨』、こんなにいっぱいどうしよう)

と思ったことへの答だと感じた。

(こんなにいっぱい)

なぜ、いっぱいあるのかというと、文学フリマに出展するつもりだったからだ。

その前の年末、「エフーディ」という同人誌に出逢い、感化され、自分でも文学フリマに出展したくなり、さっそく年間計画を立てた。

2015年9月に開催される大阪での文学フリマに向けて、まずは視察が必要だと思い、4月に金沢で開催された文学フリマに出かけていった。
同人誌制作のワークショップを受け、文庫本のレイアウトを教えてもらった。

自作の小説を文庫本のように製本して、プロ並みに販売し、大勢のファンがいる人たちがいた。
黒瀬珂瀾さんの短歌のワークショップを受け、初めての歌会体験をした。

そのときにはもう、しらさわゆうこさんと、2015年12月に「物語の森」の展示をすることが決まっていたから、9月に大阪で開催される文学フリマで『きみのトモダチ企画』を売って、トモダチの絵を描いてもらおうと思った。
「物語の森」の宣伝もしたかった。

実行できたらすごい。
しかし、部屋の片隅には発注した『手のような雨』が詰まった箱。

〈未開封〉

目にするたびに、うずくものの正体はなんだろうか。

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創ったときは輝いていたものも、時がたてば色あせてみえる。
創ったときは最高に感じたものも、時がたてば、もっとすごいものに負けてしまう。
創ったときに大切にしていたものも、時がたてば……

そんな自虐と徒労と罪悪感を払拭してくれたのが、電話越しの見知らぬおじさんの声だった。
「過去の遺物にするな」と、諭してくれた。

あの電話が、夢だったと言われたら、そうかもしれないと思う。
会ったこともないおじさんの声。

天啓のようだと感じた。

「過去の遺物にするな」

5年近くの歳月を経て、ようやく開封できた。

お金を振り込みたいと申し出てくださるかたにも、お願いをして、交換という循環に協力していただいた。

出逢った「しるし」を書き留めたいと願ったから。

わがままに応えてくださって、出逢ってくださり、受け取ってくださって、ありがとうございます。

浜田えみな

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