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「タイトル」をつけること

この絵のタイトル『Untitled』は、単純に完成したばかりの作品で、まだタイトルを考える余裕がないからです

緊縛と女性器を描く画家の菱川みひろさん

毎日画像垢で緊縛写真を自動投稿しているけど、もしその一枚一枚に「タイトルをつけて」って言われると、多分私もできない

緊縛サロン運営のたかせ秦之助さん

日々「企画提案→クリエイティブ制作→納品」というサイクルを繰り返しているプロマネ職の私にとっては、「タイトル」なしでは何も生まれません。

成果物となるキャッチフレーズやクリエイティブ表現のポイントが最初から見えていなくても、いわゆる「オブジェクティブ」や「コンセプト」などといった「タイトル」が明確になっていないままで、クリエイティブで独り歩きことはありません。


人生をグラフに


就活生時代、某R社の選考で、「自分の人生曲線(モチベーショングラフ)を書いてください」という課題に苦労したことがあります。

いわゆる、今までの人生の中での気持ちや心情を曲線図で表現し、それぞれのターニングポイントでの出来事をマークしていく、というものでしたが、
その時々の情緒に関する記憶は、必ずしも何かしら出来事に紐づけていたわけではないことと、その出来事たちも、別に「私」というアイデンティティを象徴するようなものになっていないことで、
いかにこの曲線図で書いているものを、就活としての自己アピールのツールとして使っていくのか、地味に悩んでいました。
その時は、「あくまで面接官にお見せしたいものに直結するようなポイントだけを絞ってそれっぽく見せるだけ」でいったん落ち着きました。

就活生向けサイトでの凡例(https://reashu.com/mochibe-shongurahu-kakikata/より)

なお、それまでの自己認識では、「進学・就職などの大きな人生分岐点では、自分の意思で、その時の外部要因や自分の状況を客観的に分析し、最適解を選んできました」、というふうに思っていましたので、逆にそれ以外のほかの段階での過ごし方や人生経験は、必ずしも論理的に解釈ができるわけではない、というところまでにたどり着きました。

「表」と「裏」の「タイトル」

自分のやっていることの意味や、自分の表現物の定義は一生悩んでもいいぐらいですよね。

ヌードルモデルの琥珀翠さん

ただし、その時には、一つの視点が欠落していましたことを、今なら気づくようになりました。
それは、もし「表」の人生では、私は自分の中での人生の軸を決めて、それをもとに学業や仕事で様々なことをやってきている、ということであれば、
かれこれすでに10年以上に渡る、この「裏」の人生は、いったいなんのためなのでしょうか?

仕事では今までたくさんの「タイトル」をつけてきましたが、ここになると、急に思考回路が滞ってしまうんですね。

時期によって、異なる「テーマ」のようなものがありました。
「真のSM」を探求し、その唯一無二の正解は「主従関係」だと思っていた時。
「パートナー関係」と「恋人関係」の共存の可能性を探っていましたとき。
原点回帰し、最初にこの世界へと導いてくれた「縄」に関わるすべてのことに夢中していた時。

でも、この流れは、もし学術論文で例えると、先行研究に関する言及がまったくないままで、ひたすら様々な異なる研究方法で一つ膨大すぎる課題を解決しようとしているという、最悪の期日内で卒業できなさそうな院生の文章らしいかもしれません。

「表」では、私はかなり人生を先々までに計画しておきたいタイプで、
たとえば3〜5年先には転職を考えているので、そのために今のうちではぼちぼち情報収集と、その転職前後の時期で収入が不安定の可能性が高いので一部予備金の準備が必要、などなどとステップを細分化していく人です。

でも「裏」の人生は、まったくと言っていいほど、うまくこれからのことについての思考整理がついていなく、来年どころか、三ヶ月後の自分はいったいどれだけ界隈で顔出せるかどうかすらわからない状況が続いています。

私は、無意識にも、ある種の「答え」というか、「タイトル」を求めていたかもしれません。

でも今は、「タイトルはつけられなくてもいい」、むしろ「一生を掛けて悩み続けてもいい」、と教えてくださったんです。


最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

こちらの突如の気まぐれによる小文は、以下の緊縛画家菱川みひろさんの画展の感想と、画展で展示された絵のモデルとなる琥珀翠さんの感想Noteからインスピレーションを得たものです。
また、

趣旨ずれずれで、かつ思い付いたものの1%しか書けていないような気がしますが、少しだけでも共感があれば嬉しいです。


(でもやっぱり、タイトルをつけたいですなぁ。たかせさんの写真でも、菱川さんの絵でも、より素敵に思えるようなタイトルをつけたいです)
←ただの職業病

*文中の引用は、一部筆者の記憶によるもので、必ずしも100%ご本人の言葉ではございません。ご了承ください。


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