精算をするか否かの判断基準


はじめに

先日、Usami_Renko四段のツイキャスにて、友達対局が行われた際、「精算」についての議論があった。

「精算」とは、駒の取り合いでお互いの駒を盤上からなくし、持ち駒にすることである。

ある地点で駒が取られた際に、その駒を取り返すかどうかは、悩ましい。

今回のツイキャスでは、その点を再認識することとなった。そして、私自身はどのような観点から指し手を選択しているか、いま一度整理したいと思い、筆をとった。

私の判断基準

私は大まかに以下のような基準で判断している。

①当該地点の利き数を数える

まず、取られた地点の自駒の利き数を数え、相手よりも少ないと判断すれば、基本的には取り返さないようにしている。駒数と情報量で相手に劣るのを避けるためである。

②精算後の互いの持ち駒を考える

利き数で勝っていたとしても、精算後に駒損しそうな場合は取り返さない寄り。
とりわけ角、金を渡す際には慎重になる。

③玉からの距離

玉から離れた地点での精算はせずに見切ることが多い。玉への直接的な被害は少ないし、見切らないとヤブヘビになるケースも多いと考える。
あくまでも盤面全体を使って勝てばよいので、9筋の損は他でリカバリーしたい、という「損して得取れ」的発想。

「見切らないとヤブヘビになる」という感覚は、本将棋に馴染んだものである。
本将棋勢は、玉から離れた地点での精算には消極的な方が多いのではないかと推測する。

なお、「見切り」については、以下の動画の4分30秒頃からの解説に詳しい。

④駒を取られるより前に王手をかけているかどうか

王手をかけていて、玉位置を絞れているのであれば、②の基準で損になるとしても精算しても良いケースもある。ただし、実戦でこういった場面は少ない。

実戦例

以下、ツイキャスでの友達対局で現れた場面を考える。

第1図は△97Xまで。

①自身の97への利き数は、角桂香の3枚。相手の利き数は多く見積って飛角桂香の4枚。ただし、75地点で歩が取れており、97への角の利きはないケースが多そう。

②桂香を手持ちにしたときにどちらが得をするかを考える。
まず、歩の下から用いるケースを考えると、2,3筋は歩が伸びており、先手にとって用途が広い。一方、4,5筋は後手が歩を伸ばしていても不思議ではないため、後手の使い道もありそう。
次に桂香を使った単打を考えると、16桂、48香、68香による実害はなさそう。56桂はある。先手にとって右上5×4マスは未知。反則消費のリスクもあるため、単打による攻撃は考え辛い。
結論として、等価交換と言って差し支えないだろう。やや精算する寄りか。

③玉から6筋ぶん離れている。先述した「損して得取れ」の発想で、精算しない方が良さそうか。また、97を精算するよりも、将来的に目標になりそう(∵現状相手の持ち駒は歩だけで、持ち駒を使った攻めとして、87歩→88歩成は自然)な遊び駒の角を逃がしながら66→84→62方面へ大きく転回してみたい。

④玉位置は絞れていない。

以上より、私の判断基準に照らすと、②を重視するなら精算する、③を重視するなら精算しない、という結論になる。

まとめ

今回は精算するか否かを判断する場面において、私の判断基準を整理した。
もっとも、プレイヤーによって基準や指し手の選択は様々であるから、あくまでも一つの意見として受け取っていただければ幸いである。

※参考棋譜


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