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「星の王子さま」に心を浄化された36歳の夏


月ではウサギが餅つきをしている
のかもしれない…


とお月様を見上げていたあの頃
私の心の泉は今より満ちていた。


七夕の日には織姫様と彦星様が
天の川を渡り再会できるのか…


と素敵な気持ちになりながら
笹の葉に願いを込めた短冊を
結んでいたあの頃


私の心の泉は今よりも
キラキラと水が輝いていた。


クリスマスにはサンタが来るので
朝が来るのが待ち遠しかったあの頃


私の心の泉には
美しくて色鮮やかな宝石が
たくさん散りばめられていた。


なんの根拠もなかったけれど
私の世界はきっと素敵な場所で
魔法とか冒険とか奇跡とか



そんな素敵なトキメクことが
きっと起こると信じていた。


小学生の頃
近所の高校生のお姉さんが
不貞腐れた顔で帰ってきたのを見て


どうしてあんなにムスッとして
退屈そうな顔をしてるのだろう?


と、不思議に思ったことがある。



こんなに楽しい毎日なのに
どうすればあんな顔になるのか
私には理解できなかったのだ。


そして月日は流れ…


私が高校生になった時
どうしてあのお姉さんが
ムスッとした顔で帰ってきたのか
その謎が解けたのだった。


あのお姉さんの心の泉は
カラッカラに干からびてしまい


美しくて鮮やかでキラキラ輝く
魔法の水が湧いて来なくなったのだ。


月にうさぎはいないし
七夕の願いなんか叶わないし
サンタクロースなんていない


そんなことよりも未来のために


勉強していい就職先見つけたり
部活で活躍して結果を残したり



とにかく立派な大人になるために
先生や親の言うことを良く聞いて


周囲からはみ出ないように
まともな生き方をできるように
とにかく頑張るんだ…


人よりも秀でた人間になるために
とにかく頑張るんだ…


やりたいとか、やりたくないとか
そんなことはどうでもよくて
とにかく頑張るんだ…


大人の言うことが正しいんだ…


大人は「月にうさぎがいる」
なんて誰も信じていないんだ。


魔法も冒険も奇跡も無い世界で
私の心の泉は少しずつ枯れていき
どうやって水が出ていたのかさえ
思い出せなくなってしまった。


もう一度
色鮮やかな宝石が散りばめられた
あのキラキラ輝く泉を見たいのに。


きっと何か素敵なことが起こるはず!
と根拠のない希望に胸をワクワクさせ
朝が来るのが待ち遠しかったあの頃


私は何にも知らない子供だったけど
目は輝き、心は踊り、確信があった。


我慢すれば幸せになれる
と教えられたけど



私はあの時が本当に幸せだったのだ。


先日「星の王子さま」
という全く子供向けではない
高度な児童文学を読んだ。


今まで何回か読んだけど
何がいいかさっぱり分からず
断捨離しようとさえしていた本だ。


まさかあの本で
涙する日が来ようとは…





地球に辿り着いた星の王子さまは
操縦士に羊の絵を描いてとせがむ。


どんな羊を描いても
王子様は納得しないので


とうとう四角の箱を書き
羊はその箱の中にいるよ!
と言うシーンがある。


そして
星の王子さまはこう答える。


こんなのが、ぼく
欲しくてたまらなかったんだ!
と。


星の王子さまには
箱に入った羊が見えたのだ。


そんな星の王子さまは
最後に星に帰ってしまうけど
こう締めくくられてる。


空をごらんなさい。


そして、あのヒツジは
あの花を食べたのだろうか


たべなかったのだろうか
と考えてごらんなさい。


そうしたら
世の中のことがみな


どんなに変わるものか
お分かりになるでしょう…


そして
おとなたちには、だれにも


それがどんなに大事なことか
決して分かりっこないでしょう。

星の王子さま


そう
大人たちには
決して分かりっこない。


月にはウサギが…
天の川には織姫と彦星が…


そんな気持ちで夜空を見上げていた
あの瞬間がどんなに輝いていたかが。


最後までお読みいただき、ありがとうございます♡