見出し画像

ハラボジと機関銃

私の住んでいる所は、韓国の田舎。
今や都市部では見られなくなったものを未だ残してる。
先日、銀行で怒りのマシンガンを銀行員にぶっ放すお年寄りを見た。



お年寄りは若い銀行員の何かが気に障ったようで
大声で鋭い怒りを放っていた。
20年前はエライ人だったようだ。
「自分が組合長だった時代には、、」とか
「〇〇を呼んで怒ってもらう」等の言葉からして。




韓国には歴史的に目上の人を敬う文化があるけど、
勿論それは今も大切な事だと皆思ってるけど、、
もう若い韓国人はそこにちょっとうんざりしてて
昔のやり方を当然のように強要する人をコンデと揶揄する。
(コンデ:下の世代に俺らの時はそうだったと
自分のやり方を押し付ける困った人)



出た!ワンジョン(完全な)コンデ!
銀行中の人がそこに注目してた。
こんなの、ここまでのレベルだと
都会では目に出来ないんじゃないかな~と思った。
私の住んでる所は色濃いんだよね。




こんな日に限って支店長がいなかったようで
別室でお話を、も出来ないようだった。
私の担当銀行員がヒソヒソとそれを教えてくれた。



長いな~うるさいな~
いい加減にしてよ~!と思った。
私の位置からは動画が綺麗に撮れそうで。
これ撮影してSNSにアップしたら面白い、、
みたいな気もしたけどしなかった。




何故ならその姿はまるで
私の父みたいだったから。
父も生前同じような事を町役場でやった。
どこでもお年寄りは、同じなのかもしれない。




何かの書類が必要で、その申請に行った父に
若い公務員が「身分証明書をお持ちください」と言ったら
父が「わしの顔を知らんとはけしからん!」と怒鳴ったらしい。
どうもすみません、窓口の方。




父の言い分は「昔は要らなかった」
しかも座ってる公務員は知り合いの息子や娘たち。
なんでワシがこんな狭い町で
「身分証明書」みせなアカンねん!
あの子もあの子も小さい頃から知っとるわ!
ちっこいカード一枚なくたって
ここに座っとる人間皆知り合いやないか!
なるほどなるほど、お気持ちごもっとも笑



怒って帰ってきた父をなだめたのは、私だったような気がする。
「昔は要らなかったかもしれないけど、
今の時代は要るんだよ~お父さん。
めんどうかもしれないけど一旦帰って出直せばいいんだよ。
昔そうだったからといって、
今もそうだと思ってはあきまへん、諸行無常!」と。




そういえば日本はこれからマイナンバー制度に移行する。
「マイナンバーをお持ちでないと出来ません」
な場所が増えていくことだろうから、
日本もお年寄りはますます、、かもしれない。



とにかく周りにお年寄りが多くて加齢のサンプルには困らない。
この町に住むようになったのは13年前。
それまでは首都ソウルに住んでいた。
(夫がどうしても田舎で暮らしたいというので)



お年寄りには「性格が練れて丸い」イメージがあるかもしれないけど
それは良い方向に加齢した場合であることがよ~く分かった。
昔の思い込みを一生抱え込んで頑固な石みたいになって
誰のいう事も聞かず弱っていくお年寄りもいる事を知った。
若い人が千差万別であるようにお年寄りもそうなのだ。


昨日見たあの起こったハラボジ(おじいさん)
自分は絶対あんな風にならない、と誰が言えるだろうか~。




ただ、あのハラボジ、
うるさくて実に迷惑だったけど、
それでも「言いたい事」を臆さず言ってたのはすごい事だと思う。
(内容は同意できないけど)
嫌われようが迷惑がられようが「自分はこう思う!」の
マシンガンをぶちかましてその場の空気を独り占め。
「ハラボジと機関銃」笑

まるであの時、銀行はハラボジのステージのようだった。
もちろんスポットライトが当たってるのはハラボジ。
ミュージカルのソロの歌のようでもあった。
で、「いい歌でしたか?」と聞かれると、
いえもう聞きたくない笑



ただ、あのハラボジに来年同じような事があったとして、
同じようにあんな風に怒れるかどうかは、、分からない。
すごくそう思った。
お年寄りが弱る時は、一気に来る。
春までものすごく元気だった人が、秋には逝かれてたりする。



だから私はそういう元気いっぱいに
わがままを吐くお年寄りを見るとつい
「命の花火がまだ上がっているようだ、良かったね」
生きる元気がなくなると、情動も薄くなる。




私が怒られてた窓口の人じゃないから言える事だし
ましてやあのハラボジの面倒を見てないから
言える綺麗ごとです。そういえばハラボジの横に
身内が一人立ってました。
娘か嫁か、位の年齢の女性だった。
すごく小さくなってて何にも言わない。



でももしかして、
私がもし怒り心頭のハラボジの動画を記録して
それがSNS界隈に残ってたりしたら。
このおじいさんのお身内がいつか
「うちのアボジ、本当にこの頃は元気だったなあ」
懐かしく見返して笑えたりするのかなあ、、
と思ったりしたのでした。


ありがとうございました。




























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?