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<おとなの読書感想文>ちいさなトガリネズミ

先日、急性胃腸炎になり、2、3日の間まともに食べられなくなるという経験をしました。
体はとても正直で、食べ物を食べなくなると本当に動けなくなるものです。
立ち上がるのもものを考えるのも億劫で、筋力が急激に衰えたかのように力が入りません。
やっとおかゆを食べられたとき、それだけで体温が上昇したような安心感がありました。

普段通りの食事が摂れるようになると、それまで寝てばかりだったのが嘘みたいに外に出てみたくなりました。

向かったのは西荻窪の絵本屋さん「ウレシカ」さん。
お目当ては店内ギャラリーで開催していたみやこしあきこさんの展示です(※現在は終了しています)。
ポストカード数枚と、最新作であるこの本を購入しました。外は風は冷たいものの、明るい東京の冬の空でした。

「ちいさなトガリネズミ」
(みやこしあきこ 偕成社、2022年)

トガリネズミ、という可愛らしい生き物が、どこか外国らしい街の片隅で生活しています。
よく整頓されたアパートに住み、毎朝ビスケットを決まった枚数食べ、時間通りに職場(空港の職員らしいです)に赴き、毎日きっちり働いて帰ってきます。
趣味のルービックキューブが初めて揃ったのを密かに喜び、崩してまた挑戦を始めました。
そんな彼の穏やかな日常が、木炭の繊細な陰影から浮かび上がります。

帰宅後にじっくり読んでみると、物語が体をぽかぽかと温めてくれるようでした。
それは胃の機嫌をとりながら恐る恐る食べたあのおかゆと似ていて、本は心の栄養であるとしみじみ感じます。
忙しい日々に本を読むこと自体から遠ざかっていたこともあり、年の終わりに出会えて嬉しい気持ちになった本でした。

長かったような、あっという間だったような。
2022年がもうすぐ終わります。
個人的には嬉しいことがたくさんあった年でした。
ただし過去一番というくらい目まぐるしい毎日で、たくさんの方の協力なくしては成り立たなかった年でした。
いびつながら鮮やかな日々に感謝を込めて、来年はもう少し落ち着いて仕事ができるといいなあ。
あ、そして体調管理には万全を期したいものです。


最後はトガリネズミの言葉を借りて締めくくりたいと思います。
「うん、いいとしだった」

よいお年を!

画材費、展示運営費、また様々な企画に役立てられたらと思っています。ご協力いただける方、ぜひサポートをお願いいたします。