<おとなの読書感想文>第七官界彷徨
赤いちぢれ毛の女の子が主人公と聞いて、思い浮かべる物語はなんですか?
やはり圧倒的に「赤毛のアン」を挙げる人が多いのだろうけれど、こんな小説もありました。
「第七官界彷徨」(尾崎翠 河出文庫、2009年)
和製アン、とは思うなかれ。
そう思って読むと、ちょっと裏切られてしまいます。
舞台は昭和初期の東京。美しきグリーンゲイブルズではなく、やせた蜜柑の垣根があるだけの、古ぼけた平屋の借家です。
主人公の町子は、二人の兄と従兄が暮らす下宿に炊事係として住まうことになります