国際金融制度改革の必要性 - アメリカ同時多発テロ20年の年に

今から20年前2001年9月11日、全世界を揺るがした衝撃的な事件が起きた。アメリカニューヨークの世界貿易センタービルに2機の旅客機が相次いで衝突してその象徴たるツインタワーが跡形もなく崩壊し、ペンタゴンへの別の1機、更にホワイトハウスか国会議事堂を狙っていたと言われるもう1機の、あわせて4機のハイジャックされた旅客機が次々墜落した同時多発テロ事件だ。その目標から見て取れることは、一つには未遂に終わった目標が政治機関のホワイトハウスか国会議事堂だろうとされることからアメリカの国際政治姿勢に対する不満、次いでペンタゴンに対するものからアメリカを中心とした国際的な安全保障政策に対する不満、そして2機が衝突した世界貿易センタービルからグローバル経済体制に対する明確な不満というものがあるのではないかと考えられる。
この連続テロ事件は、急速に進むIT技術とそれに伴う富の再分配のあり方の再調整を求める端緒のようなものだったと言える。つまり、IT技術の進歩で、金融商品がどんどん進化し、アメリカ軍事技術から生まれてきたとされる秘密の箱のようなインターネットというものを通じて猛スピードで取引されるという、超グローバル金融経済に対する不安の最初の大きなあらわれであったと言えるのだろう。
インターネットは軍事技術の民生化としてある程度平和的な方向性であると言えるが、それに対してこの同時多発テロの結果として起こった対テロ戦争の主要な舞台となったアフガニスタンという国は、冷戦時代から通常兵器の処分場のような役割を演じさせられ、東西両陣営から武器がどんどん流れ込み、それによって果てしない内戦が続くことで、軍事主導のグローバル経済のタン壺のような地域となっており、そこの人々はうち続く紛争で貧困にあえいでいた。そのように、より貧しい国に負担を押しつけることによって繁栄を享受するアメリカの安全保障政策に裏打ちされた国際政治への関与、そしてそれに大きく規定されて動くグローバル金融経済が怨嗟の対象となったとしても何の不思議もない。
一方で、その後もITと金融技術はどんどん進化し、そこから生まれたデリバティブをきっかけとしたリーマンブラザーズの破綻救済、そしてオキュパイウォールストリートの運動など、富の不平等な分配を指し示すような出来事が、資本主義の中心地であるアメリカに起こり続け、それが結局政治に反映される形で、アメリカ国内においてすらも取り残されたと感じた人々によってトランプ政権の成立へとつながったのだと言える。
そのトランプ政権も終わったこの同時多発テロ20周年に際して、私は、世界の安全保障体制というものをにらみながら、功利主義的世界の中でその体制に大きな影響を及ぼしている国際金融制度を大幅に考え直すべきではないかと感じている。特にその最大の問題は、上述の通りITと金融技術進化の申し子のようなデリバティブと呼ばれる金融派生商品、つまり、株や債券といった一時金融商品を元に作られた金融商品で、要するにお金を元にお金に関わる商品を作るという、現代の錬金術のからくりとも言えるものである。本稿ではこれらの問題について考えてみたい。


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