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このクソ忙しい時代を生きる 愛すべきママに読んでほしい話。


もうすぐ1年生になる女の子の話


わたしは布団の中でずっと泣いている。
となりにはママがいる。
泣いていることに気付いているはずだ。
何もしてこないのは、
きっとわたしのこの行動をどうしてよいかわからないからだと思う。

また、ママを困らせてしまった。
いつもこう。
わたしはただ静かに泣くことしかできない。

もうすぐ1年生になるわたしは、最近よく泣く。
よくわからないが、ママに言わせると「そんなこと」でよく嫌になる。
たとえば、ママがわたしの縄跳びの回数を数えわすれたときとか。
2から数えたのでは遅い。
1から数えてほしかった。もう気分はどん底。
縄跳びをおもいきり投げる。
ママのため息がもうすぐ聞こえてくることはわかっている。
でも、どうしてよいのかわからない。
こういうときは、
こっちへきて思い切り抱きしめてほしい。
そうすればわたしは気持ちをリセットして、1からまた頑張れそうな気がするのに。
ただ、いくら待ってもその瞬間はやってきそうにない。

今夜もまた、ただただ泣いている。

本当はママに言いたい。
困らせようとしているのではない。
分かってほしいだけ。そして、抱きしめてほしい。


3年生男子の話


嫌な予感はしていた。
でも、それを口に出すと、
何十倍にも威力をまして、あっという間に自分に降りかかってくることは
もう目に見えている。
お母さんの声は大きいし、よくとおり、だれもかなわない。
お父さんにも、だ。
お母さんの、「私、子育てしてます」という勢いに口出ししても無駄、ということを、もう僕が生まれてこのかた9年、
すこしずつ自分のからだにすりこんだのだろう。

着いた。
家から3時間もかけて、広く、なだらかで、初心者にバッチリなスキー場に。
スキーをしたいと言ったわけではない。
できた方がよいそうだ。
今日僕はここで、スキー教室に入ることになっている。
もともと運動は好きではないし、どちらかというと苦手です。

お母さんは、準備バッチリでしょと言わんばかりの笑顔で、集合場所に立つ。
今日のために、ウエアや手袋など一式買いそろえた。
スキーブーツと板はレンタルだが、ベストなサイズを定員さんと入念に選んだ。
もちろん僕は一言も言っていない。

お母さんはスキーをしたことがない。
今日もする気はなく、僕の付き添いである。
お父さんは僕が教室に入っている間、一人で滑ってくるそうだ。

いよいよレベルごとにわかれ、僕のグループの先生が、さぁ行きましょうという時、
同い年くらいの男の子が、早くやりたいと言わんばかりに目をキラキラさせて先生についていくのが見えた。

僕にあれはできない。
僕は、やり、たく、ない、とつぶやいた。
その声はお母さんの耳に瞬時に入ったようで、
どうして?あともうやるだけだよ?ほら頑張って!と言ってくる。

僕はだまって動かなかった。
張り詰めた時間が過ぎる。
先生は優しく、大丈夫だよ、ゆっくり進めていこうね、という。
僕は自分が情けなくなった。
ただ、じっとしていることしかできなかったが、
もうお母さんの言いなりにはなりたくなかった。
いきなりそういう感情が大きくなってきた。

ぼくは小さいころから自分で自分の意見を言うのが苦手だったと思う。
たっぷりの時間があれば、なんとか思いを自分なりにまとめられて話せたのかもしれない。
けれど、そんなに待ってはもらえない。
すぐさま当たり前のように代弁されてきたし、まあそんなような感じだったので、いいと思っていた。
だけど、いつまでこうなんだと急に不安になった。

だから、やりたくないと抵抗した。
知り合いは誰もいない。
ここでなら抵抗できるかもしれないと思った。
むりやり背中を押してくるお母さんを振り払って地面に寝転がった。
お父さんはおろおろしていた。困った顔をしていたが、むりやり行かせようとはしなかった。
お母さんは恥ずかしいと言わんばかりに顔を真っ赤にして、
ほら、あんな小さい子でも頑張っているよ!行きなさい!今日はもうやるって決まっているの!
と言っている。

涙が出てきた。
寝転がってもがいた。
先生は、やりたくなったらまたおいでといって他のみんなが待っている先へ向かった。
涙でぐしゃぐしゃになって寝そべっている僕を、
どうしたんだろうと横目で見ながら小さい女の子がスイーと滑っていった。

お母さんからはお金まで払ってあるのにと言われた。
返金してもらえたのかはわからない。
ただ、僕は抵抗した。
それが今日の僕のすべてだった。

帰りの車の中が最悪だったことはいうまでもない。
お母さんはずっとぶつぶつ言っているし、お父さんはずっと黙っている。
僕はこれからどうしていこう。
遠くの明るい太陽を見ながらぼっとしていた。

すこしくらい聞いてほしかった。
あの時の僕の気持ちをすこしでもわかってほしかった。
欲をいえば、お母さんには何も言わず抱きしめてほしかった。


3年生女子の話


もう、いつになったら一緒に遊んでくれるのだろう。
もう何回も何回も誘っている。
昨日もそうだった。
ままは、
あとでね。
今忙しい。
ままはみんなのために家事をしているの、ジャマしないで。
そんな時間あるわけない。

で、
人をまきこむな。

一緒に遊んだら絶対楽しいのに。
毎回わたしは思う。
それなりのアイデアをもって提案している。
でも、それ以上いうとままは本気で機嫌を悪くするからあきらめる。

だけど、たまに一緒に遊んでくれる。
この前の夜は
マグロごっこをしてくれた。
ぴちぴちと布団の上ではねるわたしと妹を
漁師のように釣り上げてくれた。
最高に楽しかった。

もっとままのヒマな時間がふえるといい。


3さいのおにいちゃんのはなし


いもうとがうまれてから
ママはずっといもうとのそばにいる。
ぼくは1歳から保育園へ行っているけれど、毎回行きたくないと言ってみる。
この前なんか1時間半(とママが言っていた)泣き続けてやった。
結局、ぼくが大人になって、最後にはちゃんと行った。
うーんとごほうびの約束はしたけれど。

何をするにもぼくはあとまわしになった。
そりゃあ、たまにはママもいけないと思って
ぼくをうんと可愛がってくれる。
でもいもうとがそばにいるときはそうじゃあない。

こうしてくれればいいんだ。
ぼくを隊長にでもして、
隊長、いもうとのおむつをかえてもいいですか!
隊長、いもうとがねむそうなので寝かしつけてきます!
隊長、保育園の時間なので出動してもらってもいいですか!早めに迎えに行きますので!
隊長、今日もお疲れ様です!大好きなおやつ、準備しておきました!
とか、ね。

それならぼくはいもうとをもっと可愛がってあげる。

ママだいすき。
寝る前はぎゅってしてね。


中2女子の話


毎日がめんどくさくてしょうがない。
何が面倒くさいっていろいろ全部だ。
友達とのラインのやりとり。
学校での噂話。
宿題。
進路について考えること。

わたしは反抗期だと思う。
でも、自覚はない。そりゃあこうなるでしょ。

わたしの母は、こうあるべきというものが強すぎていけない。
ほっといてくれればいいのに。

帰るなり質問攻めをしてくるのはもう勘弁してほしい。
無視して自分の部屋へ入る。
わたしだって成長している。と思う。
ふつうそうだろう。
中学生にもなれば、親になんでもかんでも話すわけない。
なので、
話してくれないと憂いている母がどうかしている。

母からすれば、私は反抗期真っただ中だ。
それがなんだ。
だんだんこうなると、こうなるものだろうと予測さえしといてくれれば、
反抗期と言われないのではないか。
母はいつか昔の娘が戻ってきてくれると思っているが、同じように心を開くかどうかは、私自身わからない。

今はこんな時期なんだろう。
そのうち、いい形でおさまるといいと思う。
お母さんには感謝しているし、大切な存在なのだから。

高2男子の話


○○、私立いけないらしいぜ。親からそういわれたらしい。
ぼそぼそ声で誰かと誰かが話をしている。
こんな田舎でも、県で有数の進学校に通っていれば、
こんな会話が聞こえるようになる。
高2の夏だ。

僕も志望校とまでは行かないが、そろそろだいたいの進路を考えなければいけない。
うちの親は、どこでも好きなところへ行けばよいと言ってくれている。
はたして本当にそうなのかはわからない。
うん。とだけ返事をした。

最近は同じクラスの男3人、女2人でつるむことが多い。
その中の女子の一人がこう言っていた。
親に薬学部に行きたいと言ったら、いいじゃないと賛成してもらえた。
でも親が薬学部にかかる費用を調べたところ、今度は向こうから話があると言われてしまった。
わたしには国公立にいける頭はないから諦めたと。

親の経済状況を嘆いてもしょうがないが、
ただ、何とも言えない感情になる。
僕はまだ方向性すら決まっていないから、
やりたいことを見つけている奴はすごいと思うけど。
昔から勉強は好きで、
高校でもそれなりに上の方の成績をキープしてきた。

夕食の時、進路についてのはなしをした。
父、母ともしっかり聞いてくれた。
後悔のないように頑張れという感じだった。
家には恵まれていると思う。

次の日のお弁当には僕の好物がたくさん入っており、
嬉しかった。
すこしずつやりたいことを見つけて頑張ろうと思う。


ある母の話。


マルチタスクが苦手である。
そんな私の日常はマルチタスクだらけだ。
シングルタスクよりも効率が悪いことは知っている。
だが、仕事、家事、育児をいっぺんにやるということは、
マルチタスクの連続である。

帰宅した瞬間から
子供たちのプリント類を引っ張り出し、
ご飯を作りながらチェック、好きをみて洗濯物を取り込み、
立ちながら衣類ボックスへ放り込む。
習い事に間にあうよう夕飯を食べさせ、その間に宿題の丸つけ。
習い事から帰ってきたら音読も聞かなきゃあいけない。
今週は給食当番だったか。
かごに放り込まれた給食エプロンを発見し、ため息を飲み込む。
ごみの日も忘れてはいけない。
夜のうちにまとめておかなければひどい目にあう。

買い出しは習い事に行っている間に済ませよう。
今のうちに買い出しリストを。。
おっと。もう出発の時間だ。

下の娘がこれ見てと言ってくるが、チラ見ですます。
怒っているが、仕方ない。
忙しいのだ。

娘が二人いるが、一人は年長、もう一人は3年生になったので、
タスクは完了しやすくなった方だ。
小さい頃はもっと大変で、途中途中で新しいタスクが飛び込んでくる。
おしっこ漏れた、とか、ジュースこぼれた、とか、
ままこれやって!とか、きょうだいげんかの仲裁とか、とか。
考え始めたらきりがない。

こどもにはもっと時間をかけてあげたいと思う。
聞いてほしいことだってあるだろう。
こどもの方もこの状況に慣れているのか、てきとうに私の忙しさを流している。


でも、
ママの全部を一瞬でも独り占めできたときの喜びは格別だろうナ。

これから毎晩、
だいすき、ぎゅ。なにか聞いてほしいことある?
おやすみ。

もういいと断られる日まで、しぶとく続けようと思う。




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