シェア
散歩の時によく通る細い路地には、年季が入った古い長屋が並んでいた。 明治・大正・昭和初期にかけて建てられた日本家屋の、あの独特の佇まいが好きな私は、この長屋の筋がお気に入りで、散歩の時にはいつも必ず通るようにしていた。 この長屋は、今どき珍しく満室のようで、どの部屋も昔から住んでいる住人ばかりだった。そこに漂う気配から感じるに、皆さん、ご高齢者なのだろう。 少し開いた窓から聞こえるテレビの音、ガチャガチャと食器を洗う音、電話で会話している高齢男性のしゃがれた大きな声、い