無題

オフィスの存在意義が問われている - Smart Workplace Design Expoより -

10月にアムステルダムにて参加してきた Smart Workplace Design Expo 、非常に学びの多い3日間でした。どんなことを見聞きしてきたのか、何回かに分けて書いていきたいと思います。

今回はカンファレンスのセッションで見聞きしたことについて。

予習編はこちらをどうぞ。

マイクロソフト・アディダス・ダノンなど複数の企業のケーススタディや、オフィス設計を行う立場の話、コンサルティング会社の話など様々な観点からの "Smart Workplace" に関するセッションがありましたが、共通する大きな課題感のひとつにオフィスの存在意義が問われているということがあると感じました。

考えてみれば当たり前の話ではあるのですが、在宅勤務やシェアオフィスの利用など、場所に縛られない多様な働き方が技術的に可能になり、優秀な人材(特にミレニアル世代)を獲得し繋ぎ留めたい企業がそういった勤務形態を取り入れつつある中で、オフィスは「にも関わらずわざわざ行くところ」になりつつあります。自宅やカフェの方が仕事が捗るのであれば、あえてオフィスに行く必要はないのかもしれない。企業=物理的な固有のオフィスが存在する、というこれまでの概念が当たり前のものではなくなり、なぜ莫大なコストをかけてオフィスを維持する必要があるのかという、これまでは問われることのなかった問いに企業は答えていかなければならないでしょう。

ではその問いになんと答えるのか。

今回のカンファレンスでは "Collaboration" "Purpose" "Experience" というキーワードをしばしば耳にしました。

Collaboration という言葉自体に新しさはないですが、そこに含まれるニュアンスとして、意図的に集まって collaborate するというよりも、 "casual encounters" (偶然の出会い)や "create collisions" (衝突を作り出す)といった意図しない形での従業員同士の交わりをオフィスデザインの力で作り出し、そこから生まれるイノベーションに期待する、ということが強く感じられました。アディダスのセッションでは、意図的な集まりであるいわゆる会議はどんどん減らしていきたいと話していました。

Purpose という言葉は、パーパスドリブンとかパーパスマインドセットという形で何回か登場しており、「業務」にフォーカスを当てそれを最適化するためのオフィスというこれまでの考え方から、なんのためにそれをするのかという「目的」にシフトする必要があるという文脈で用いられていました。また、その「目的」は単に会社の目的ということではなく、これからの時代は個人1人1人が何を成し遂げたいかという目的と、自分が働く企業の方向性が一致していることが大事になるという話もありました。オフィスデザインの文脈では、今目の前にある問題を解消するためのオフィスをデザインするのではなく、自分たちは究極的に何を実現したいのかそのゴールをまず見定め、そのゴールに向かうためには10年後どうなっているべきなのか、では5年後は?と逆算していき、それでは次のオフィスはこうあるべきだと設計していくのが大事だという話があり、非常に納得しました。

Experience という言葉も何度か出てきましたが、いわゆる Employee Experience (EX) の文脈というよりも、「ミレニアル世代は物質的なモノより Experience を大事にする世代だから、顧客としても人材としても彼らをアトラクトするには Experience の提供が必要だよ」という話で、そのためにはオフィスも様々な Experience を提供する場であるべき、という論調でした。

いわゆる「作業」を快適に効率的に行うためのオフィス空間はもはや必須ではなく、会社として何を成し遂げたいかという目的をはっきりとさせ、その実現のために必要なイノベーションやアイデアを生み出し育てる場所としてオフィスを機能させること、いかに小さな邂逅や良い意味での衝突の機会を作り出せるかということが非常に大事になってくるのだと思います。

次回は、そういったことを実現しようと建てられたダノンのアムステルダムオフィス見学について書きたいと思います。



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