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夏はちょっと怖い話 2

夏になると、怖い話を見たり、聞いたり、話したくなるのはなぜでしょうね。
ちょっとゾクッとして、安上がりに涼しくなるからかな。
さて、二つ目のお話です。

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子どもというのは、大人には見えないものが見えているらしいという話はよく聞きます。
実は私の娘も、子どもの頃見えていたようでした。

小さい頃は、あんなのが見える、あんなのがいる、とよく話してくれましたが(その話はまた後日)、見えたと聞いた者のことを思うようになったのか、見えなくなったのか、少しずつ話さなくなった頃のお話です。

私は、趣味の一つでは?と言われるくらい引っ越しが好きです。
気分転換に旅行に行くように気分転換に引っ越しをする。
親には「引っ越し貧乏」と言われたりしています。

そんな数回の引っ越し先の一軒に、ああ、あれはやばい物件だったんだ、というハイツが一つあります。
確かに、家賃は母子家庭には嬉しい金額。相場より少し安かったです。
そこを引っ越してから一切近くまでも行っていないので、今はどうなっているのかわかりませんが。

「お兄ちゃん達を起こしてきて」
娘に頼むと、部屋の入り口で、「起きや、学校やで、起きや」と声をかけるだけで一切部屋に入ろうとしません。
「入っていって、叩いておこしてよ」と言っても
「いやや」と娘。
以前はズカズカと兄たちの部屋に入っていき、このときとばかりに兄たちを叩いて起こしていた娘が、そのハイツでは絶対に入ろうとしませんでした。

その理由は、そこを引っ越すときにやっと聞くことになるのですが。

ある日、私の友人が家に遊びに来ていて、二人でリビングでお茶を飲んでお喋りしていたときのことです。
息子達の部屋からパリンという何か割れる音がしました。
家には私たち二人だけ。
当然息子達の部屋にも誰もいません。

あまりの音に、なんだなんだ、と息子達の部屋へ友人と行ってみると、息子・次男の机の上のデスクランプの電球と、そして息子が使っていた香水の瓶が粉々に割れていました。
香水の瓶は、踏みつけても割れそうにない頑丈な瓶。
それが粉々に割れていたのです。

実はそのハイツに引っ越してから、飼っていたフェレットのサリーちゃんの毛の大半が抜けてはげ坊主になったり、ちょっとした悪いことが続いたりしていました。
何でもかんでも部屋や何か霊的なもののせいなんて思う私ではありませんでしたが、娘の態度が気になっていたのと、なんとなく自分でも普段感じていた感覚を後押しをするかのように、デスクランプの電球と香水の瓶が誰もいない部屋で割れたことで、ああ、ここは引っ越した方がいい部屋なのかも、と。
そこへ引っ越してきてから一年も経っていませんでしたが、引っ越すことにしました。
親には何を考えているの。引っ越したばかりなのに!と散々嫌みを言われましたが、電球と香水の瓶が割れたのを一緒に見た友人も「その方が良さそう」と言ってくれました。

引っ越しの日、荷物が運び出されて、空になった息子の部屋の畳を見てびっくり。
畳は、荷物を置いていたら、そこだけ変色せずに綺麗というのは見たことがありますが、次男のソファーを置いていた場所の畳が真っ黒になっているのです。
息子の汗が染みこんだ?
いえ、そういう作りのソファーではありません。汚れの黒さでもありません。なんとも不気味な黒さです。

最後に鍵を閉めてそのハイツを後にしようとしていた時、娘が言いました。

「兄ちゃん達の部屋の、○太(次男)のソファーの所にこんな形のズボンをはいたおじさんがいつも立っていた」と。

こんなズボンというのは、建築業のニッカポッカ?あるいは軍服のズボン?
上の方が少し膨らんでいて裾がしぼんだ形のズボンだと言うのです。
そんなズボン、長男も次男も持っていません。

そして、娘はそのおじさんがじっと立っているので、その部屋に入れなかったと、最後の最後になって言うのです。
「だって言うと、ママ、怖くて昼間一人でいられなくなるでしょ?」と。

ふと、息子達の部屋の窓を見上げました。
窓の所に、ぼんやりとした影が見えた気がしました。いえ、気のせいではなく、確かに誰かが立っていました。
まるで私たちを見送っているかのように。

少しホッとしました。
ああ、ついてこなかった。
あの人は、あの部屋に住んでいるんだ、と。
多分、今も。

そうそう、電球や香水の瓶が割れたときのことですが、実はあの日、あの時間、次男が友人達と心霊スポット〝滝畑ダム〟にふざけ半分に遊びに行っていたらしく、そんな所に行って余計な者を連れてくるなとそのおじさんが怒ったのかも知れません。

なんにせよ、それ以降は、自宅であれ、事務所であれ引っ越すとき、娘と下見に行き、娘が渋ると私自身どれだけ気に入ってもそこを諦めることにしています。

そして、フェレットのサリーちゃんの毛は、そのハイツを引っ越してから復活しました。そして、私は仕事も順調になり本も出しました。

ええ、実話です。


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