伊達さゆりに抱く非凡さと不安さ

伊達さゆりという声優をみると、なんでこんな子が仙台から出てきたのかと思うことがある。

芸能一家でも子役出身者でも無い、高校時代は演劇部にすら入ったことも無い、芸能界には全く無縁であろう仙台の一般家庭の子が芸歴2年も経っていない段階で、ここまで完成されているのは恐ろしい。しかし、あまりに非凡すぎるその才能は却って「Liella!の伊達さゆり」で終わってしまう危うさを感じてしまうこともある。

声優に限らず、新人ははっきりと未熟さが見える一方で、未知数の粗けずりな魅力があるが、個人的には伊達にはそれが見えない。本人は歌い方で悩んでいると言うし、露骨にステージが立て込むと喉の調子を落とすことがあるが、基本的には天性だけでここまでやってきたと言っても良い。そういうタイプは、存外伸びしろが少ない。壁に当たって試行錯誤をするタイプの方が伸びることが多いのだ。

大学生時代から本名名義で芸能活動をしたのに、芸能人としての仕事を続けることに壁にぶち当たってた青山なぎさや、オーディションの段階で一度挫折した鈴原希実の方が、工夫をする分もしかしたら声優として大成しているかもしれない。

実際に青山は声優としてのキャリアは伊達と同じ期間しかないのに、SYNDUALITYというロボットアニメのメインキャラを演じることが決まっている。

宮城ローカルの仕事も月一回まではないにしろ割と数を与え、作品の舞台は宮城県でも無く伊達の地元で有ると言うだけでLiella!のツアーの重要な節目は必ず宮城で行うなど、宮城と宮崎では東京からのアクセス性やそもそもの当地の芸能関係の仕事の需要が段違いである事情もわかるが、鈴原が加入した最初の3rdツアーで九州飛ばしをするなど伊達は鈴原よりも事務所から贔屓されている印象を個人的には感じる。しかし、それが伊達の成長にはプラスになるのかは慎重に考えた方が良い。

声優になりたくて上京したわけでは無く、あくまでも澁谷かのんを演じるために上京し、仕事で壁にぶち当たったときに悩みを相談できる同じ仕事の友人も少ないように見受けられ、東京で一人暮らししている伊達と、姉と暮らしている可能性が高く母親が東京出身であることからみても、地方出身でありながら肉親が身近に居る鈴原とでは境遇が違いすぎ、定期的に地元に帰した方が精神衛生上良いというのは理解はする。

追記:11月1日の鈴原さんの誕生日配信で「お姉ちゃんの部屋から(今の自宅に)帰るってなったってときに靴下がないとなって探したら重ねた履いていた」という趣旨の発言をしていましたので、一人暮らしのようです。

しかし、本質的に伊達に必要なのは同期の経歴が似た者同士のライバルである。もちろん、本質的には芸能人は野沢雅子から子役声優まで全てが仕事を奪い合う敵同士であり、孤独を愛せないと生き残る資格は無い。

しかし、それを差し引いても1人のヒロインを演じるために、人と会うことが憚られた時期に上京した伊達の境遇は声優界でも特殊かつ孤独であり、もしかしたら例えば81プロデュースの声優ユニットであるi☆RisのようにLiella!は全員一般公募で同じ事務所に所属するほうが良かったのかも知れない。

今の伊達は次々と新しい仕事を与えるよりも、むしろ可能なら3期までの空いた時間に養成所に入れて全てを基礎からやり直して、声優を目指す同世代の人と交流を深める時期だと思う。

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