コントが始まる 第一話 金子茂樹
青春群像劇の金字塔が生まれる。そんな予感がした第一話だった。余計なBGMは一切なく、脚本の力が役者さん達のフィルターを通して更に大きな力となり真っ直ぐに伝わる。展開、伏線回収、役者陣、演出などそのどれもが素晴らしい。眩しすぎる。しかし、その影に隠れて行われている上質な人間描写にこそ、このドラマの本当の魅力がある。
【はじめに】
脚本を手掛けるのは、金子茂樹さんだ。群像劇の名手であり、数々のヒット作を世に送り出している。記憶に新しいのは、昨年、向田邦子賞を受賞した「俺の話は長い」だろう。この作品で開花した論理性、作家性が今作にも現れている。
【水のトラブル】
このドラマは、毎話一本のショートコントから始まることが決まっている。しかし、そのコントが終わるともう展開は予想することが難しい。思わぬ方向に我々は導かれることになる。
第一話では、初めのコントが伏線となり、モノローグによって中浜里穂子(有村架純さん)と高岩春斗(菅田将暉さん)の過去、現在を行ったり来たりすることにより物語が進む。しかし、心を震わせるのは、会話劇にある。脚本としては非常に難しいことをしているにも関わらず、登場人物5人の人間性、関係性が見事に表現されていることに脱帽した。
さらに、裏切りが入る。マクベスをやるようなお笑いの方ならこういうおかしな会話をするだろうなとイメージ形成をさせる。そのことによって違和感のある会話でさえも普通の会話として視聴者の頭の中で処理させる。つまり、細かい人物形成により前振りを前振りと気付かせないようにしているのだ。それを伏線として回収することによって圧倒的な爽快感を味わうことができる。そして、涙も水のトラブルの伏線になっていることに気づくのだ。
【笑い泣き】
感情が混じり合う。楽しいけど苦しい、笑えるが泣ける。相反するような感情がそこには確かに存在する。またそれだけではなく、状況、セリフ、伏線で異常なほどに対比が多用される。対比がないシーンはないといっても過言ではない。
そして、このテーマから切っても切り離せないのが、夢と現実の折り合いだ。現実と夢の乖離は今後も描かれることになるだろう。
【人生とは】
全てを見終わり思い出されるのは、チャップリンの言葉ではないだろうか?
Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.
人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。
人生は、壮大なコント(喜劇)である。誰もが指差す大敗を前振りだと信じて進む。
マクベスは解散するのか?五人でコントをする日が来るのか?目が離せない。
(言うまでもないが、仲野大賀さんの演技は最高だった)
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