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大豆田とわ子と三人の元夫 第二話

まるでカルピスの原液のような第二話。つまり、脚本をできる限りカットすることなくテレビドラマの枠に凝縮することによって濃度の高いものにしたような作りであった。

【面倒臭い人間】

今回は、三人目の元夫、中村慎森(岡田将生)について多くの時間を割き、語られた慎森回であった。

一話を見た時に思った慎森のイメージは、「めんどくさい、理屈っぽい」と感じたのではないだろうか。これは、坂元作品の「カルテット」でいう家森愉高、「最高の離婚」でいう濱崎光生に似ている。

慎森「チーズフォンデュって底が見えないから何が入ってるかわかりませんよね。そういえば、ある店で隣のテーブルのチーズフォンデュからせみの幼虫が大量に出てきたことがあったかな。煮えたチーズの底からわらわらと。もうチーズなのか、煮込みすぎて溶けたせみの幼虫なのか」

これは、慎森の毒だ。「最高の離婚」の濱崎光生のように、彼もまたなにか気に入らないことがあると、相手を傷つけることで自分を正当化する。そして、言い終えた後に後悔が押し寄せる。

しかし、二話ではそのめんどくさい、理屈っぽくなった理由や弱みや欠点が見えたことによって愛される人物になった。面倒臭いけど、可愛い。面倒臭いけど、面白い。この人となら一緒に生きてゆける。そう思えたからこそ、大豆田とわ子は慎森と結婚したのではないだろうか。

【テーマ】

   とわ子と慎森がおでことおでこをくっつけて。
慎森「ごめん。本当は思い出にできない、さよならが言えない、またあのソファに座ってなくした時間を取り戻したい」
とわ子「なくしたんじゃないじゃん、捨てたんじゃん。捨てたものは帰ってこないよ。私はもう思い出にしたし、さよならも言った」

これは、冒頭の離婚裁判の夢を連想させる。何かをなくしたのではなく、慎森が捨てたのだ。それは今後語られるとして。ここで思い出されるのは、「カルテット」でもテーマとして語られた不可逆性だ。レモンかけた唐揚げはもう元には戻らない。それが今作では、オレンジのソファに当たる。捨てたものは帰ってこないのだ。

【関係性】

慎森と大豆田とわ子による嫌いなもののマシンガンのような言い合いが行われる。

「mother」では、好きなものノート。好きなことを考えることによって、嫌いな現実から目を背けることが表現されていた。

しかし、今回は違う。嫌いなことをこれだけ言える関係性を表現しているのだ。これは「問題のあるレストラン」や「anone」など様々な坂元作品で使用される手法である。このやりとりができる関係。また、これだけ嫌いなことを言えることは、嫌いが好きになる可能性がある。慎森は過去に大豆田とわ子の好きをおさえている。だから、オセロみたいにひっくり返って好きになることもあり得るのだ。

【成長】

大豆田とわ子は過去にしがみつかないが、慎森は過去が捨てられない。何故なら、幸せなことだってあったし、楽しいことだってあったからだ。世界一幸せだって思えた瞬間もあった。だが、捨ててしまったものは戻らない。不可逆なのだ。不可逆だがしかし、小谷翼(石橋菜津美さん)はこのように言う。

翼「グッドルーザー、負けたときに何を思ったか、何をしたかで本当の勝者は決まるんだよ」

この言葉で少し変わることができた慎森。

そして、とわ子のトラブルに苦手な走りで向かう。

慎森「大豆田とわ子の離婚した…元夫です。」

警察に駆けつけたのなら、「弁護士です」と名乗るべきだが、慎森は元夫と名乗った。元夫としてとわ子を唄を守るのだ。

そして、翌日会社に行く慎森。「挨拶っていります?」と言っていた慎森が「おはようございます」と挨拶をする。出来事だけを見ると、小さな成長に見えるが、プライドの高い慎森からすれば、大きな成長なのだ。

【いちごのタルト】

時に女子高生がいちごのタルトを食べるまでの過程でさえも誰かの心を動かすことになる。世界は繋がっているということを実感させる。小さな出来事でも意図せぬところで誰かの心を動かす。そして、続くのだ。

慎森「すごく頑張ってると思う。君は昔も今もいつも頑張っていて、いつもきらきら輝いている。ずっと眩しいよ」

こんな言葉をかけてくれる人はいなかった。気を遣い、気を遣われ、気を遣う。そんな日々を送る大豆田とわ子にとってはこの言葉はいちごタルトだったのだ。

大豆田「別れたけど、今でも一緒に生きてると思ってるよ」

いちごのタルトを巡るやりとりがここまで発展する。

さらに、それを見る私達もいちごのタルトを貰ってしまった。

【かごめ】

今回もどこか核心をついたことをいう綿来かごめ。

かごめ「めんどくさいっていう気持ちは好きと嫌いの間にあって、どっちかって言うと好きなほうに近いんだよ」

【違和感】

あの独特のナレーションはまだ健在だった。しかし、私達はそれに免疫がつき、かつ、一話よりもナレーション量が減ることによって受け入れやすく感じたのではないだろうか。

【おまけ】

大豆田とわ子は、困ったときに頬を舌で膨らます。単発ドラマ「スイッチ」の蔦谷円(松たか子さん)は何か許せないことがあったときに膨らましていた。

離婚をつけるかつかないか、わざわざお寿司屋さんで死んだマグロ、死んだエビ美味しいと言うのか、偽装離婚と真実離婚、これはいるのかいらないのか、清少納言とステーションワゴンなどなど。小ネタが満載だった。

八作(松田龍平さん)「女性の過去になれるって幸せなことじゃないですか」の後の鹿太郎(東京03 角田さん)の表情の変化最高だった。第三話はどうやら、鹿太郎の過去について語られるようだ。次回も目が離せない。

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