肥満と妊娠・出産の関係性


どうも!ぶらす室長です。

今回は、女性の肥満が妊娠・出産に与える影響について、論文を見ていこうと思います。

不妊治療でなかなか上手くいかない方から
「何かできる事はないか?」と聞かれる事は多いです。

もし、少し太り気味の方がいれば、減量するというのはできることの1つかもしれません。

それでは、論文を見ていきましょう!

Female obesity is negatively associated with live birth rate following IVF: a systematic review and meta-analysis

論文概要

Human reproductionに掲載された、システマティックレビュー・メタ解析論文を見ていきます。

タイトルは「女性の肥満は体外受精の生児獲得率に負の影響を与える」というものです。

結論をタイトルにしているのは、エビデンスレベルに自信がある論文です。

この論文では、'obesity', 'body mass index', 'live birth', 'IVF', 'ICSI'のキーワードで検索して関連する論文をレビューおよびメタ解析しています。

最終的に21報の論文を解析して、肥満の影響を調べています。

肥満と比較対象区(コントロール)の定義はBMIにより分類され

肥満 (BMI 30 kg/m2)

ノーマル体重 (BMI 18.5-24.9 kg/m2)

と定義し、この2群間で比較しています。

結果: 肥満は出産率を低下させる

タイトルにある通り、肥満は出産率を低下させる結果となっています。

論文の症例数を再計算した出産率の比較では

肥満群 40476/147643
ノーマル体重群 149235/462238

肥満群 27.4%
ノーマル体重群 32.3%

肥満群のリスク比は0.85でした。
(95%CI 0.82-0.87)

これは、肥満だと出産率が15%程度低下するという事ですね。

結果: 初回胚移植のみで比較

初回の移植に限定して比較した場合

肥満群 27.7%
ノーマル体重群 35.8%

肥満群のリスク比は0.76でした。
(95%CI 0.65-0.90)

これは、初回胚移植で肥満群だと出産率が24%程度低下する事になります。

結果: 由来卵子がドナー卵子か自家卵子かによる比較

⚪︎ドナー卵子のみの比較

肥満群 41.4%
ノーマル体重群 47.3%

肥満群のリスク比は0.80でした。
(95%CI 0.68-0.94)

⚪︎自家卵子のみの比較

肥満群 26.8%
ノーマル体重群 31.3%

肥満群のリスク比は0.86でした。
(95%CI 0.82-0.89)

この比較は重要で、ドナー卵子のみでも出産率が低下しているという事は、「卵子が良くても肥満の症例に移植すると出産率が低下してしまう」事を表しています。

結果: 新鮮胚移植のみ、凍結融解胚移植のみによる比較

⚪︎新鮮胚移植のみの比較

肥満群 27.2%
ノーマル体重群 31.9%

肥満群のリスク比は0.86でした。
(95%CI 0.85-0.86)

⚪︎凍結融解胚移植のみの比較

肥満群 30.5%
ノーマル体重群 31.9%

肥満群のリスク比は0.96でした。
(95%CI 0.63-1.45)

凍結融解胚移植のみの比較では有意差が出ていませんが、論文は1報で、なおかつ例数も肥満群が59症例とお話にならないレベルで少ないので、意味のない比較ですね。

結果: PCOS症例のみ、非PCOS症例のみの比較

⚪︎PCOS症例のみの比較

肥満群 34.4%
ノーマル体重群 44.2%

肥満群のリスク比は0.78でした。
(95%CI 0.74-0.82)

⚪︎非PCOS症例のみの比較

肥満群 26.0%
ノーマル体重群 30.7%

肥満群のリスク比は0.92でした。
(95%CI 0.68-1.25)

非PCOS症例のみの比較では有意差はなく肥満の影響はないように見えます。

ただ、論文数は2報で片方は超小規模の比較、片方は超大規模な比較で、実質1報のみの結果なので、PCOS症例でないなら、肥満は関係ないとは言えません。

まとめと考察

数値的にはそこまで大きな影響はないものの、母体の肥満は、出産率を低下させる可能性が高いと言えます。

過去のメタ解析論文も、肥満は臨床妊娠率を低下させ、流産率を増加させると報告されていて、今回の結果と一致しています。

さて、どのようなメカニズムで出産率が低下しているのでしょうか?
考察を読んでいきましょう。

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