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恐るべし 尹東柱の磁場① ~詩を読む会に韓国から親子が参加~

なんと、韓国から親子3人が尹東柱の詩を読む会に参加。
聞けば、映画「東柱」を見たことや、小学生の子どもが東柱の童詩「樹」を習ったことなどがきっかけで、時折、親子で彼の詩に触れているそうだ。

  樹(1937推定)

樹がおどれば
 かぜがふき、

樹がしずまれば
 かぜもやむ。

読んだ作品は、1941年6月に書かれた「帰って見る夜」

会の存在は、5年ほど前に韓国のネット新聞を読んで知っていたそうで、今回の福岡滞在中に例会が行われることを知り、訪ねてきたのだった。前日には、尹東柱が亡くなった福岡刑務所跡地にも行ったそうだ。
(5年前、詩人尹東柱を記念する立教の会の楊原さんの紹介で、李潤玉記者を福岡刑務所跡地に案内したことがあった)

実は、今月から会場を「日韓交流の家 ななこのおうち」に移したばかり。会場を変更したことは、九州大学の藤原惠洋先生の「ふ印ブログ」でしか告知していなかった。

たくさんの人に見てもらえるようにと、西日本新聞の平原奈央子記者が書いた記事を引用して、先生自ら作成されたチラシがブログに載せられていたのだが、まさかその情報が日本を通り越して韓国にまで届いていたとは…。

ふ印ラボのブログに載ったチラシ

ななこのおうちでは、会の仲間のnanakoさんが親子を温かく迎えた。nanakoさんは、ハングルPOPアートを教えたり、韓国人旅行者に着物の着付け体験をしたりしているので、女の子に着物を着せてあげて、親子にとってもサプライズとなった。

入居するビルの入り口には、日韓交流スペース「ななこのお家」の看板

例会では、韓国語と日本語を交えて「帰って見る夜」の感想などを語り合った。

帰って見る夜 (1941.6)

 世間から戻るようにやっとわたしの狭い部屋に帰って明かりを消します。明かりをつけておくのは、あまりにも疲れることです。それは昼の延長ですから――

いま窓を開けて空気を入れ換えねばならないのに 外をそっと覗いて見ても 部屋の中のように暗く ちょうど世間と同じで 雨に打たれて帰ってきた道がそのまま雨に濡れています。

一日の鬱憤(うっぷん)を晴らすすべもなく そっと瞼を閉じれば 心の裡(うち)へ流れる音、いま、思想がりんごのようにおのずから熟れていきます。

「日本に支配された時代、尹東柱が経験した苦しみは、当時の朝鮮の人々の苦しみでもあった。外にいても家に帰ってきても、つらい。心の中には怒りや悲しみなど、いろんな思いがあるけれど、希望を持って生きていこうとしている」
女の子の父親が感想を披露してくれた。

人が人をつなぎ、また人をつなぐ。その起点になるのは、いつも尹東柱だ。

「尹東柱は人と人をつなぐ磁場である」
まさに、今年の追悼式の講演会で、九州大学の辻野裕紀先生が語った、この言葉通りなのだ。

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