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タバコについて

タバコが嫌いである。喫う人の気が知れない。もはやすっかり嫌煙ムードであるからこの意見に賛成していただける人の方が多いことと思う。あれは百害あって一利なし、なのである。

厳密に言うとタバコそのものが嫌いと言うよりそれを喫っている人が嫌いと言った方が良いかも知れない。これまで、随分、喫煙者には嫌な思いをさせられて来た。
まず、職場。今では信じられないかも知れないが、平成も中頃までは職場の執務室内の自分の席でタバコを喫うことが許されていたのだ。書類やパソコンを前に火のついたタバコをくわえてプカプカ煙りを吐いて居られたのである。恐ろしいことに。おかげで朝から嫌な匂いと煙たい思いを随分させられた。八人くらいの島の中で一人喫煙者が居るだけで机や椅子はヤニでベタベタ。パソコンのキーボードも画面も。まだその頃はフロッピーディスクを使っていたのだが、そのフロッピーをパソコンから取り出そうとイジェクトボタンを押すとこれまたヤニで「ヌルッ」という感じで出て来る始末。今からは考えられない地獄だった。

街中でも嫌なことが多かった。バス、電車、デパート、飲食店など禁煙の場所でも平気でタバコに火を点ける輩が多かった。今のように嫌煙のムードが盛んではなかったので、誰かが注意をしても「は? 何言ってんですか?」みたいな眼で見返すだけで気にもかけずプカプカ煙りを吐き続けている。子供や老人が咳込んでも知らん顔。仕方がないからタバコを喫わない被害者の方がその場を立ち去ることになっていた。夜の居酒屋などでそういう場面に出くわすと逆ギレして暴力を振るわれることもあった。まったく始末に負えない地獄絵だった。

今や世界的に嫌煙ブーム。タバコは良くないもの。著名人でも喫わない人がどんどん増えている。新幹線も飲食店も居酒屋ですら禁煙が原則。喫煙は限られたスペースでのみ可能となっている。これが本来。もっと早くこうなるべきだった。喫煙する本人だけではない、周りの人の健康まで害するのがタバコなのだから。

それでも、これほど世界的に嫌煙ムードが広がっているにもかかわらず、あくまで喫いたがる人が居る。恐れ入る。まったく。
たとえば、職場でも、喫煙できる会議室があるとなると10分くらい歩いて移動してでもそこで会議をやろうとする喫煙者が居る。周りは大迷惑する。会議に出席する10人の内、タバコが喫いたいその一人のために九人が資料やパソコン、プロジェクターなどを運んで長い距離を移動してやらなければならない。みんながそれほど大変な思いをしているのに、当の喫煙者は一言の詫びもなしにプカプカ上機嫌で煙りを吐いている。どういう神経なんだと思う。タバコで神経がやられてしまっているのだろうか。

街中にも根強い喫煙者たちが居る。デパートや駅の近く、商業ビルの一隅に喫煙スペースが設けられている。デパートなどは小さなガラス張りの部屋が喫煙スペースになっていて「同時に五名様まで」などとなっている。だから、中の人が出て来るまで順番待ちの列が出来ていたりする。そこまでして喫いたいのかと呆れてしまう。駅の近くや商業ビルなどでは、屋外にそういうスペースが小さく設けられていたりする。春や夏は良いとして秋冬は寒風吹きすさぶのにもかかわらず、喫煙者はそこでタバコを喫っている。寒いし吐いた煙りが見えないくらい風が強いのに。そこまでして喫わなければならないのか。呆れながらしばし観察してしまうほどだ。

むかし、職場でヘビースモーカーの先輩と隣席になったことがある。一日中、煙りを吹かしていた。周囲の同僚からも健康に悪いから止めた方が良いよと言われていた。その先輩は答えて曰く、「仕事にタバコは必要だ」「喫煙所で仕事を拾って来るのだ」とのこと。でも、どう考えてもその先輩はタバコを喫っている時間、タバコを買いに行っている時間、灰皿を掃除している時間が圧倒的に長く、仕事をしているところを見たことがなかった。一年を通して、仕事の成果を上司に評価されたり社内で何か発表したりしていたということもない。一体、何だったのか。当時の僕は、とにかくそのタバコの煙りで頭が痛くて気分が悪く、憂鬱だったのを憶えている。
今は本当に良くなった。嫌煙ムード万歳。タバコは一本一万円くらいにして良いと思う。それでも喫う人は喫うのだろうが。

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