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ラジオについて

ラジオが好きで根っからのラジオっ子である。小学校四年生の頃から深夜ラジオを聴いていた。テレビを見るより圧倒的にラジオを聴いていた。音の出る小さな箱が持つ何とも言えない魅力に人生の早い時期から取り憑かれていたのだ。

テレビをあまり見なかったのは子供の頃から視力が悪かったせいもある。眼が悪くなるから見るな、と親に言われたこともあるが、その時には既に近視はかなり進んでいて映像がはっきり見えなかったので見なくなった気がする。それに、テレビばかり見てないで勉強しなさい、という定番のお小言もうるさかったので自然と見なくなった気もする。いずれにせよ、テレビには魅力を感じなかった。見ていて面白いと思えたことがほとんどなかった。

これに反してラジオは面白かった。聴き始めた時から虜になった。まず、パーソナリティーのお喋りが上手でたくさん笑わせてくれるのが気に入った。就職するまで地方に住んでいて、ローカル局の番組に笑福亭鶴瓶師匠や浜村淳さん、明石家さんまさんなどが出演していて毎日面白い話をたくさん聞かせてもらった。今から思えば、やしきたかじんさんや嘉門達夫さん、谷村新司さんや桂三枝(現・文枝)師匠などお喋りの達人たちのラジオ番組をたらふく聴いて育った。贅沢な時間を過ごしていたと思う。おかげで、その後、話の上手い人下手な人を聴き分けられる感覚が身についた気がする。お喋りの達人たちが教えてくれたのだ。

ラジオの良いところは、聴きながら他のことが出来るところだ。たとえば模型を作ったり、絵を描いたりしながらでも聴ける。ラジオドラマなどを聴きながら、たくさん模型を作った憶えがある。
ラジオドラマは面白い。音だけで全てを描写する。声優たちのセリフや効果音、BGMを聴きながら、どういう情景が描かれているのかを自分の頭の中で想像する。テレビを見ているより、よっぽど面白い。おかげで声優さんに詳しくなり、ラジオドラマの原作である面白い小説にもたくさん巡り会うことが出来た。見て終わりのテレビとは違う。ラジオは聴いてから広がる世界が豊かだ。

就職するまで地方に住んでいたのでローカル局は問題なく受信できていたのだが、東京など関東地方の面白い番組が聴けなかったのは残念だった。今ではradikoという便利なツールがあり、ネットを介して全国のラジオ番組が地方でも聴ける。でも、僕がラジオを聴き始めた頃はそんなものはなかった。それでも、雑誌などで紹介されている東京の方の番組が聴きたいと思った。特にアイドルがパーソナリティーを務めている番組が。そこで、深夜零時すぎから東京の方の放送局(ニッポン放送や文化放送など)に慎重にダイアルを合わせて聴くことにチャレンジしていた。だいたい午前一時も過ぎると雑音混じりながらニッポン放送や文化放送の番組を何とか聴くことが出来た。原田知世ちゃんや南野陽子さんの番組が電波の海の中から雑音混じりに聴こえて来る。オールナイトニッポンの二部も何とか聴けたりした。そして、東の空が白み始める頃、だいたい午前五時を過ぎると雑音は激しくなり東からの音声は聴き取れなくなってしまう。ああ、これをもっとクリアな音声で聴きたいなと思いながら、夜明けを迎えていた。

就職を機に上京してからは、憧れの関東のラジオ番組をクリアな音声で聴けるようになった。J-WAVEやFMヨコハマなどの番組も聴き放題だ。とても贅沢な気分になれた。
ラジオは良い。ラジオから流れて来る音楽やお喋りは生活を豊かにしてくれる。ラジオが大好きである。

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