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学ぶことと働くことについて〜職業相談員として

現在の職場では、もう数年来、教える係さんなんですが、コロナ禍で雇用関連が大騒ぎになった2年前に増員配置された新人さんはキャリコンでは無い2人でした。1人はその経歴から、もう1人は人柄的な点が採用の決め手になったのだと上司からの説明がありました。
実際に職業相談という仕事を教える場面では、キャリコン資格も無いし、キャリア理論についての知識もないとなると、共通言語が無いのと同じなんだなあと思いました。言葉が通じない。
OJTに随分と苦労しましたが、その頃の投稿にこんなことが書いてありました。

[そのこと]についての知識が無いのならば本を読めって私は思うのだけど…

キャリア理論について少しでも知識を入れて欲しいから貸すよって言った本を、「いえ、同じのを本屋で買います。」と言った人、週が明けたら、「本屋で手にとったけど、あんなに厚い本は無理で、違うやつにしました。」と…
うん、なんか、私の中では終了です。残念な人でした。

と、モヤっとしていたら、過去の投稿であがってきました。


ロジャーズの「無条件の肯定的尊重」が自分になるのではないかと感じたのは職業相談員になって間も無くですが、以来、何か迷いが出た時や、私自身の心を充したい時、琴線に触れる言葉に出会いたい時に、ロジャーズの言葉を集めた本を読み返します。

「良い子を演じたり、装ったり、無理をせずとも、この人は私の事を信頼して、受けとめてくれる」とクライエントが感じるような関係の質を提供する。

職業相談員になったばかりの頃、出会ったのが、30代の男性。いわゆるグレーな方でした。会話が成り立ちません。
高校はこの辺りではハイレベルな所を卒業し、その後10年ほど工場で働いていますので、就職活動にも意欲的でした。毎日、求人検索し、紹介を希望して窓口に来ます。

求めに応じて、紹介はしますが、心の中で「受かるのは難しいだろうなー」と思いながら、日々繰り返すことが辛くなって、上司に相談すると「前田さんは一般相談員だから、そこまで考えなくてよろしい。淡々と紹介してください。」
ちょっと、カチンときました。
職業相談員には階級っていうか職制の違いがあり、一般相談員は専門性はなく「一般」なんです。まあ、なので、「難しいこと考えなくてもいいよ。そこまで求めていないから」ってことな訳です。

なにやら納得が行かなかった私は、それから、今までの人脈を使い、社会福祉士をしている人や学校の先生の他、障害に関係している人に教えを乞うて歩き、読める本を片っ端から読みました。

そして、行きついたのは二つのことでした。

ひとつは、事実と感想を分けて、事実の会話を積み上げること。
もう一つは、毎日同じ繰り返しの彼の行動。ルーチンであることが、彼の安心なのであれば、そのルーチンの一つに私もなろうということでした。

そう思えて、対応している日々が続きました。
相談員は3人いましたが、特に順番カードなどは無かったので、いつしか、私が空くまで、他の人に順番を譲るようになっていました。

そんなある日、いつも通りの流れを終えて、ありがとうございましたとの挨拶をして出口に向かった彼が、不意に戻ってきました。
どうしたのかな。と待ってみると…
逡巡しながら、「よろしくお願いします」と頭を下げました。
その瞬間、何かが伝わり合いました。
「はい(^^)また明日、お待ちしていますね」と送り出した後、休憩室に飛び込んで泣きました。
何か説明できないものを得た瞬間でした。


忘れられない人です。私にとって、今の私になるきっかけとなった人、そしてこの仕事を手放したくないと思うようになった出来事。

そしてその後にいろいろ考えていたようです。

「きっかけになった人」のことを書いてみたら、今の自分の感情を「これまで」から整理したくなりました。

今ちょっとモヤっとしていて、昨日同僚と話して気づいたのは、「学ばなくても働ける」って考えている人が嫌だって思っているんだということ。そういう人が目の前にいるってことが嫌なんだなきっと。

じゃあなんでそう思うのかな。

「きっかけの人」の時に、いろいろな知り合いに話を聞いてまわっていたら、とある人から「勉強する場はたくさんあるよ、集めようと思えば情報は集まる。」と言われたことが、気づきだったんだろうなと思います。
それまで、誰彼構わずに「わからないから教えてください〜」と聞いていたけれど、そうではなくて、自分で情報を集めて、そこから知識を深めて行くものなんだなと理解しました。
わからないから〜って聞いて歩いている時は、その時に困っている事につける薬はありませんか?って考えていたんだろううなあ。ケース毎に効く薬を求めていても、丁度いい物なんてそうそうないよね。ちょっとお恥ずかしい過去になりました。

その後は、情報を集める事も、知識を深める事もひっくるめて「学び」だと思って動いてきたんだな。
精力的に行動する私を見て、周囲からのWHY?が多くなったのもこの頃から・・・「どうしてそんなにいろいろ勉強してるの?」「それをやったらどうなるの(なんの得があるの)?」「どうしてそんなに元気なの?」ほんとにたくさんの人から訊かれることが続き、最初は真面目に返事しようと思っていたのだけど、長くなっちゃうと相手がどんどん退いていくのがわかるので、そこまで知りたくはなかったんだろうと考えて、訊かれた時には「長くなるけど聞きたいの?」と確認してから話すことにしてからもう随分と経ちました。

「それって何に活かせるの?」って聞いてくる人は相変わらずいるけれど、そういう人は「ケース毎に効く薬」が欲しい人。その質問にどう答えようか考えてみたら、ちょっとわかったことがあります。

「学び」を仕事に活かすのではなく、「学び」が、自分になって、仕事の中のどこかで不意に現われるんだなってことです。

そんなふうに気づいてから更に2年が立ちました。
つい数日前、気のおけない同僚とじっくり話した時に、やっぱり口から出たのが、「学び続けなくても職業相談員ができるって思っている人って、怖くないのかねぇ」でした。
やっぱり、私にとっては「学ぶこと」と「働くこと」は切り離せない様です。

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