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国立にもブルワリーがある!

こんにちは。イート・ローカル探検隊(略してE探)の隊員、ささきです。

コロナやオリンピックで世間が騒がしく、台風まで接近している中の8月7日、2回目の活動として国立市のビール醸造所、KUNITACHI BREWERY(クニタチブルワリー)を見学してまいりました。

 今回訪問した名人:KUNITACHI BREWERYの醸造長  斯波克幸さん
 訪問日:2021年8月7日
 製品:クラフトビール


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今回レポートを担当する私自身、このE探に参加する一番の引きがねがブルワリー見学だったので、この日を大変楽しみにしていました。もう15年以上クラフトビールが好きで飲み続け、ビアパブで知識豊富なマスターや隣席のお客さんたちからいろいろ聞いてきてはいますが、飲みながら聞いた知識はもちろん次の日には残っていない・・・ ということで、素面の状態できちんと学べる機会があるのはありがたかったです。しかも醸造長の方から直接!

当日は、KUNITACHI BREWERY(愛称「くにぶる」)に隣接する、今年6月に開店したばかりのレストラン「かすがい」の前でメンバー集合しました。
くにぶるは少々年季の入ったビルの1、2階に入っています。早速メンバー全員がブルワリーの入口に向かい、醸造長の斯波さんと対面しました。斯波さんはDJもなさるということで、醸造スペースにはいい気分にさせてくれる音楽が流れています。

まずは、二階にある「麦芽室」の見学ということで2階に向かったのですが、外階段の踊り場から見えるタンクや機械の説明から丁寧にしてくださいます。外には、醸造中に使うお湯や冷水のタンク、不凍液を回し続ける機械、炭酸をつける用のガスボンベ等が設置されています。このような設備は小さい醸造所では持てないところも多いとのことです。

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そして麦芽室へ入ります。麦芽は水分を吸収してしまうので、基本的には24時間除湿しているそうです。このあと、ビールの最終的な味に関係してくる細かなパラメーターの話が色々と出てきますが、この水分含有量もその一つだそうです。

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この部屋には約30種類の麦芽があるとのことで、麦芽メーカーの話や、生産地、特性などのお話を伺いました。麦芽の試食もさせていただき、それぞれ特徴があり、またそのままでもおいしい(シリアルみたいな)のが面白かったですね。中にはすでに発酵させてあって酸っぱいものがあったりして、これはほんのり梅っぽいという感想も出ました。

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この貯蔵室にはモルトミルという粉砕機が大・小二台設置されていて、大きい方は、粉砕された麦芽がそのまま一階の醸造スペースに送り込めるように、床ぶちぬきで管が通っていました。一方小さい方のミルはどこにもつながっていないので、人力で粉を下に運ぶ必要があります。これは、麦芽が入荷したときも二階まで運ぶ必要があるわけで、運送屋さんは「これ定期的にあるんですか」と聞いてまわっていたとのことです。厳しい現実ですね。

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その他添加物質の役割や背景も説明していただき、この時点で予定よりも大幅に時間超過気味だったようです。お話が丁寧ですし、持っている知識をできるだけ出していこう、という感じで話していただけるので、どうしても時間が長くなったようです。こちらとしてはありがたいです。

続いて1階の醸造室へ移動しました。一階は大きく二つのスペースにわかれていて、これは建物の構造上真ん中の壁が撤去できなかったためだそう。醸造所というのは建物の構造上での制約がいくつもあり、その制約内で設備を揃える。同じレシピでも設備によって出来上がりの味が全然違ってくるので、醸造の際はこのような設備の特性を把握するのがとても大事、というお話が興味深かったです。

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最初のスペースでは「糖化、濾過、煮沸、分離」という四つの行程について、実際の窯やタンクを見ながら(のぞきこみながら)細かい説明をしていただきました。続いて隣の発酵スペースへ行き、発酵のお話を伺います。私は今まで「上面発酵」と「下面発酵」が具体的に何のことだか今一つわかってなかったのですが、その辺りの質問にも答えていただきました。上面発酵と下面発酵は酵母の種類によって区別されるもので、元々は酵母がどこで発酵するかに由来してつけられた区分のようですが、下面発酵でも、実際に見ていると上の方で発酵してることが多いとのことでした。必ずしも下の方で発酵しているわけではないのですね!

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そして最後に、瓶詰スペースに移動。パッケージングは樽詰めと瓶詰めがあるそうですが、樽詰めは直接タンクから行い、瓶詰めは専用の機械を使って一本一本行っているそうです。
コロナ禍のため樽の需要がほとんどなくなってしまい、逆に瓶の需要が高まっているそうですが、瓶詰めは樽詰めよりも圧倒的に労力がかかる(斯波さんは7,8倍の労力とおっしゃっていました)。小規模の醸造所での負担は相当だそうです。
くにぶるのような専用の機械を所有していない醸造所の労力たるや・・。
クラフトビールの店頭での販売価格が大手よりぐっと高くなってしまうのは、こういう事情もあるのですね。

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斯波さんは、ビールのことならいくらでも話すことがあるという感じで、我々の質問にも丁寧に答えていただき、予定時間を大幅にオーバーして見学は終了しました。
醸造の説明中には化学物質や化学反応の名称がばんばん出てきて、醸造って化学なんだなーということを強く感じました。
ただ、最終的なビールの味には、麦芽の種類、ホップの種類や組み合わせ、酵母の種類の他にも、上記した設備の特性や、水質、タンパク質、ホップを入れるタイミングや入れる際の温度、等々、様々な要素が影響してくる、しかし酒類という性質上税制の問題があって実質的な試作はできない(!)ので、味がどうなるかは作ってみないとわからないというのはしびれました。最後は職人の「感覚」頼りというか。その感覚はもちろん知識と経験に裏打ちされたものだと思いますが、プラスアルファのセンスがとても大きいのだと思います。そして驚いたのは、斯波さんはほとんどお酒が飲めないということです。酒好きかどうかはおいしいビールを作るということに関係ないのですね。

この日は残念ながら緊急事態宣言中で、このあと実際にくにぶるのビールで乾杯というわけにはいきませんでしたが、メンバーの半数は国立駅近くの酒屋のせきやに向かい、くにぶるのボトルを入手して帰途につきました。宣言が解除されたあかつきには、ぜひE探のメンバーとくにぶるのビールを堪能したいものです!

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