小学生の息子が見たスパンジェンバーグの魅力
ライオンズに今年加入したコーリー・スパンジェンバーグという選手がいる。
三振が多いという欠点もあるものの、内外(?)野を守れるユーティリティ性や意外性のある打撃、積極的な走塁、そして何より誠実な人柄がファンからの支持を集めている。
小学生になる僕の息子もスパンジェンバーグのファンだという。
確かにスパンジェンバーグは魅力的な選手かもしれない。しかし、栗山や中村を始め、源田、外崎などライオンズには、他にも魅力的な選手がいる。森や山川といった豪快で、「いかにも小学生が好きそうな」選手もいる。なんとなく外国人助っ人に憧れるという話なのであれば、メヒアやニールという選択肢もある。
スパンジェンバーグの何が、それほどまでに息子を引き付けたのだろうか。
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色々とイレギュラーなことの多かった2020年のプロ野球だったが、僕は幸いにも複数回、スタジアムで観戦をする機会を得ることができた。
なかでも思い出深いのは大阪への遠征である。これまで東京ドームや神宮、千葉マリンといった関東圏の球場しかいったことがなかった自分にとって京セラドームでの観戦を体験できたことは、とても意義深かった。
メットライフ1試合、京セラドーム2試合と3日連続で現地に行き、3連敗したという事実に目を背けることさえできれば、遠征は非常に充実したものだった。それは楽しそうに、いてまえドックを頬張る自分の写真からもうかがいしることができる。
9月18日、京セラドーム初体験となったこの日は、序盤にニールが炎上。3回表に金子がツーランを放ち2点を返すものの、その後も失点を重ね2-8で敗れるというライオンズファンにとっては見どころの少ない試合となった。
しかし、我が家にとってのハイライトは試合後に訪れた。
試合終了後、その日、レフトを守っていたスパンジェンバーグがグランドに戻ってくると、フィールドビューシートに座っていた少年にバットをプレゼントしたのである。
少年が大喜びする様子を僕の息子もうらやましそうに眺めていた。
その後、メットライフドームに行った際に「スパンジェンバーグのタオルが欲しい」という息子に僕は尋ねた。「なぜスパンジェンバーグがよいのか?」と。
息子は言う。
「だって、スパンジェンバーグは優しいから」。
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プロ野球は厳しい世界だ。
どれだけ聖人君子であっても結果が出なければクビになる。ましてや、助っ人外国人であれば、問われるのは実力のみだ。過去にライオンズに在籍したボウデンやワグナーといった選手もナイスガイだったと伝え聞くが、彼らがライオンズで2年目のシーズンを迎えることはなかった。
現在のライオンズのチーム状況を考えれば、スパンジェンバーグは欠かせない戦力だと思う。それは守備位置であったりOPSといったデータで裏付けることもできるだろう。
ただ、試合を見ているだけではわからない魅力がプロ野球選手にあるのも事実だ。そして、それは時にプレー以上にファンを引き付け、応援するのに十分な理由になる。
息子がスパンジェンバーグを愛する理由を聞くと僕は、レイモンド・チャンドラーの小説の一節を思い出す。
「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」。
来年も「優しい」スパンジェンバーグの活躍が見れることを僕は息子と共に願っている。
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