【書評】企業法務のための 民事訴訟の実務解説

本日から「修習をきっかけに読んだが,法務在籍時に読んでおきたかったと感じた書籍」を紹介していきたいと思います。

今回は【第1弾】です!

【概要】民事訴訟手続の内容・実務的な流れを分かりやすくかつ詳細に解説
【難易度】★★★
【法務お役立ち度】★★★★

1.はじめに

裁判官経験のある圓道至剛先生が書かれた著書ですが,企業法務経験者ではない司法修習生からも非常に評価が高いです。

民事訴訟の実務の全体像について,訴訟提起前~第1回口頭弁論期日~続行期日~証拠調べ…と言った感じで,手続の大まかな流れに沿って分かりやすく説明されています。

末尾の「サンプル書式」も充実しまくっているところもGoodですね!

2.「企業法務のための」というタイトル

タイトルに「企業法務のための」と記載されていますが,「司法修習生のための」「若手弁護士や裁判官のための」に置き換えてもよいのではないかと個人的に思います・・・

何故「企業法務のための」と記載されているのかと言えば,訴訟に巻き込まれた企業の法務担当者の留意点に関する「コラム」が充実しているからでししょうか。
例えば,こんなテーマのコラムが含まれております。

・潜在的訴訟~訴訟提起に至るまでに仕込んでおくべきこと
・担当弁護士の選択と訴訟対応能力の確認方法(コンフリクトチェック含む)
・セカンドオピニオンの活用
・訴訟に要する時間やコスト
・勝訴した場合に相手方に請求できる費用
・訴状の内容を確認する際の留意点
・提出する証拠の内容確認
・証人の選定

法務担当者として紛争・トラブル対応に苦慮した経験のある私が読んでも,今更ながら「目からウロコ」なコラムもあります。

もちろんコラムだけでなく,本文には民事訴訟の基本的事項や実務的留意点が記載されているので,法務担当者の方にも役立つ部分はあるはずです。

3.修習生の立場で読んで感じたこと

民事裁判修習では,争点整理のための弁論準備手続(最近はオンラインでの書面準備手続が多い)や弁論期日の傍聴,記録検討及び起案がメインですが,ふと民事手続や関連書面で疑問に感じたことが既に言及されていることも多いです。

もちろん指導担当の裁判官が不要というわけでもありません,笑
あと,この点は自分が勉強不足だからかもしれません…

訴状,答弁書,準備書面等の作成の留意点にも触れる書籍は多いですが,本書では,内容に誤りがあった場合の具体的な対応,提出方法等,実務で直面しそうな痒い所に手が届く説明もあります。

証拠保全手続一つをとっても,保全対象に電子カルテが含まれる場合の留意点や保全手続の同行者等に触れていたり,和解手続の部分で「17条決定」にまで触れているのが,修習で学んだ事項とシンクロして面白いと感じました。

さらに,裁判所の所内用語だと勝手に思い込んでいた「回付」や「休止」の説明がされているのにもビックリしました笑

逆をいえば,民事訴訟手続に触れたことのない方々が読んだ場合,内容が少し細かいと感じるかもしれません・・・

4.おわりに

確かに,民事訴訟手続の基本的事項に加え,実務上の運用を踏まえた詳細な説明も多いので,民事訴訟を一通り学んでいない方が最後まで通読するのはお勧めできない部分もあります。

とはいえ,法務担当者,司法修習生,若手弁護士等いずれにしても,本書を辞書代わりに使用するのが良いと思います。

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