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ドラクルージュにおけるストーリー・情報の考え方について

ありがたいことに、知り合いのドラクルージュのシナリオのテストプレイに参加する機会が何度かあります。
そういった時に、私がどういった点でそのシナリオを見ているか、意見を出すかといったポイントをまとめてみました。
個人的かつ理想的な考え方であって実際に全てにおいて私が実践してるかというとそうでもないのでその点はご了承ください。
客観的に自作のシナリオを見直し、ブラッシュアップする時に参考になれば幸いです。

1.ストーリーの重要さについて
実際をいうとドラクルージュというシステムにおいてストーリーというのは然程重要ではないです。
このシステムはいちゃいちゃしたり戦ってたり戦ってたりしたら勝手に進行するようになっていて、シナリオの起承転結がなくてもある程度楽しくプレイ出来るようになっています。
ストーリーがないとシナリオが作れない、と言うことはありません。
シチュエーションとデータさえ設定すれば、十分シナリオとして成立するので、最初から完璧なストーリーのあるシナリオを目指す必要はないでしょう。
ただ、シナリオを作る上でストーリーを凝りたいという気持ちが湧くこともあります。
そんな時にどういう点を意識してシナリオを見直すか書き出してみました。

2.PCへの目的の開示
どんなシステムでも言えることですが、「PCに何をさせるか」、「シナリオの中で何をして欲しいか」という目的を明確にしておきましょう。
大体PLが何話せばいいかわからないと言ってる時は何故か動かしにくいPCを作って来たときか、シナリオに求められている言動や行動が提示されていない時です。人間は話題がないと天気の話ぐらいしかすることが無いのです。
そういった自体を防ぐ為に、予めシナリオの導入やハンドアウトではPC達の行動指針を示しておくと良いでしょう。
序の幕で自己紹介があるので、それを元に会話をして上手く会話を転がしてくれるPLも存在しますが、そもそもPLの手腕で面白さが変わるシナリオはナンセンスだと思うので、話題や行動の方向性はシナリオの概要に明示しておきましょう。
目的はシナリオ全体における『大目的』と、各幕における『小目的』を設定しておくと後々データやシナリオやRPを詰める時に未来の自分に怨まれなくてすみます。
大目的を達成する為に各幕でどういう小目的を達成すればいいか?ではその為にどんなシチュエーションがあり、どんなキャラクターがいればいいのか?……と考えていけば自然と必要な材料は見えてくるはずです。

3.5W1Hに切り分ける
シナリオを作っているとどこでどれぐらいの情報を提示すべきかということに暫し悩みます。
如何せんドラクルージュというシステムは会話劇で構成される上にストーリーがなくてもターン進行でイベントが進みます。情報の開示がなく、結局シナリオで何がしたいのかPLが汲み取れない、ということが起きることもあるでしょう。
情報開示については、5W1Hを意識するとわかりやすくなります。
5W1Hとは言いますが、ドラクルージュにおいて主に意識するのは「What(事象)」「Who(人物)」「Why(動機)」「How(方法)」でいいかと思います。(強いていうならWhyやHowは優先度を下げてもいいです)
シナリオの情報をこれらに切り分けて、いくつかを先にPLに開示して、いくつかをシナリオの中に配置すればいいのです。
優先的に考えるべきは「必ずPLが知ってなくてはいけない」情報の場所です。シナリオ中に知ってほしいこと以外は概要、HO、導入、NPCの説明などで出来るだけ先に出してしまいましょう。シナリオの中で開示するものは本当に数個でよいのです。
謎は1個あれば十分PLに驚かせられますが、ある程度凝りたいのであれば各幕で1つずつ謎を開示していくのが良いでしょう。
謎と言っても難しく考えることは無く、例えば「敵を倒す」という事象に対して「なぜ倒さなくてはいけないのか」、「誰を倒さなくてはいけないのか」、「どうしたら倒せるのか」という各項目を埋めるくらいの考え方でいいです。
ここから「何故」について更に誰がいつ何をしたか……と掘り下げいくなどすれば情報は増やすことが出来ますしストーリーは複雑になります。
ただし複雑過ぎてもPL側が理解できないと意味が無いので初めはシンプルに考えてよいでしょう。

4.全ての情報をシナリオで埋める必要はない
3.で「Why」「How」の優先度を下げてもいいと書きましたが、シナリオの中の全ての情報や背景を明確に作者が考える必要はありません。
考え過ぎて筆が止まったり、考え過ぎて整合性が取れなくなるくらいなら都合よくPLに考えてもらえばいいのです。
仮に特定の会話をNPCにさせたいと思ってるなら、会話の前後はPLに投げて、必要な部分だけ帳尻を合わせてもいいし、逆にシチュエーションだけ提示しておいて中身はPLの自由にさせてもいいわけです。
シナリオの中には事象さえ書いておけば、ある程度の理由や動機はPLが考えてくれます。

5.「登場人物」を考えよう
全てを明示する必要はありませんが、「What」や「Who」を暈しておくと逆に考える際に何に焦点を合わせればいいのかPLが混乱しがちです。PLには少なくともどちらかは明かしておきましょう。
特にドラクルージュはPC達の目標が脇役として設定され、絆を取得するシステムです。「Who」の情報は整理するように心がけましょう。基本ルールブックには幕における脇役は1〜2体が目安と書かれています。
単純にDRの操作がややこしい、データが増えるという問題もありますが、登場するNPCの数だけPLが処理すべき情報の量が増えることは意識すべきです。
ドラクルージュはターン制で、幕の中での行動リソースが限られているシステムです。
限られたリソースの中でPL達はPCに取らせる行動を取捨選択しなければならず、NPCの数だけ選択肢が増えます。つまり、各選択肢に応じてシナリオの情報パターンを用意する必要が出るのです。
脇役ではなく端役にする、という手もなくは無いのですが、端役は行いを持たない上に存在点がすくないため、DRから能動的に動かすのが難しいデータになります。
折角出したNPCを上手く掘り下げられずに終わってしまっては勿体無い、かと言ってずっとNPCが喋ってはPLを退屈させてしまいます。
シナリオの中の情報をNPCに持たせるべきか、PCに持たせるべきかはよく考えましょう。もしかしたら、PCに情報をHOとして与えれば、そのNPCの役割が消え、登場させる必要が無くなるかもしれません。
ただし、PCはDRの管理できない存在になりますので、シナリオの都合通りに動かす必要があるキャラクターはNPCとして設定しておくのが望ましいです。

6.「予想出来ない」と「予想外」は違う
シナリオの中で明かされる衝撃の真実と言うものはいつだってPLの心をときめかせるものです。シナリオの中にサプライズを仕込みたいという人はきっと多いでしょう。
しかし、驚きを求めすぎてPLにヒントを与えないことは、余計な混乱を招く種になります。
予想が出来るシナリオは裏を返せば「提示されてるヒントをPLが確実に汲み取れる」と言うことなのです。
作者やDRはシナリオの背景や情報を俯瞰的に観測し、情報を用意することが出来ますが、PLは断片的に明かされた情報をつなぎ合わせ予想して行動やRPの指針を立てています。予想が出来ないというのは、時としてPLの自由度を奪うことになります。
「こういう動きをして欲しい」という希望があるなら、それをPLが予測出来るようにヒントを与えましょう。具体的な動き方や要求が思いつかないのであれば、シチュエーションやお題をPLに提示するだけでも上等です。
前述の通り、シナリオの中でPLの予想外のことは一個あれば十分なのです。その一個を大切に握りしめつつ、他の情報を与えてPLにあれこれ予想させる方が、サプライズは印象的に残ってくれます。
仮に全ての予想が当てられたのなら、それはシナリオで出した情報が十分だったことを証明するのです。

7.必要なのは「わかりやすい」こと
あれこれ書きましたが、実際書いてる時は小難しく考える必要はありません。完成しない傑作より完成した駄作の方が人の目に触れます。
無駄のない巧みなシナリオを目指す必要もないと思います。
無駄や遊びがあっていいし、多少整合性が無くとも大体PLはノリと勢いで楽しんでくれます。
考え過ぎて自分がシナリオでやりたかったことを見失っては本末転倒と言うものです。自分が好きで盛り込んでるなら堂々と出してしまいましょう。
ただ、自分のやりたいことがPLに伝わらなければ意味がありません。
結局「わかりやすさ」というのは、シナリオの中でやりたいことをPLが理解出来るかであり、それはシナリオをプレイする中で予想出来るか、あるいは情報が提示された時に納得出来るかになるのです。
TRPGにおけるシナリオはあくまでストーリーラインであり、同じシナリオでもメンバーやRPで内容が左右されることは大いにあります。ただ、それはシナリオに対する参加者なりの「回答」なのです。
欲しい回答を得るために「問題」としてシナリオがあるのです。そう考えた時に「問題」としてストーリーを組み立てられているか考えてみてください。
無論、情報の受け取り方は千差万別です。実際回してみないとわからない部分はありますが、自分の書いたシナリオの良し悪しを判断するには良い基準でしょう。

8.終わり
ストーリーといいつつ情報の出し方の話になってしまいましたが、結局TRPGにおけるストーリーとは「参加者間で描かれる物語を共有する」ことになのだと思います。
その材料として情報があるのだと考えています。
ドラクルージュにおいてストーリーは必須ではないですが、ストーリーがあることでRPがグッと盛り上がり、印象的なセッションを作り上げる助けになることでしょう。
是非、自身の思い描くストーリーをシナリオの中に描き出して見てください。
良い常夜ライフを!


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