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兄王子放浪日記

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2002年頃に書いていた超方向音痴男の話です。
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番外編・女賢者放浪記

番外編・女賢者放浪記

女賢者は「ドラクエ7ヘッポコ旅日記」の登場人物です。

2004年6月。
今日はヘッポコ兄の高校の体育祭。
女賢者は運動会が好きである。(見るだけなら)
自分にはまったく縁のなかった「リレーの選手」などという役目を、必ず負う足の速い息子を持ってからというもの、ますます運動会が好きになった。
たいていの親はたぶん見に行かない。高校の体育祭なんて。
しかも、電車で延々1時間以上もかかる高尾のグラウンド

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番外編・病院放浪記 その2

2001年12月某日。
肺気胸が完治してから3ヶ月もたたない、この日の朝、ヘッポコ兄が、
「頭がガンガンする」
と言いながら起きて来た。体温38.0度。
私は忙しくて休めないので、仕事に行く。昼休憩で帰宅すると、食欲もなく水分も摂れていない。
(彼は熱が40度あっても食欲だけはある人なのに、ちょっとおかしい)

‪17時にあがり、タクシーで近所のかかりつけ医院へ連れて行く。‬

‪700ccの点滴

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番外編・病院放浪記 その1

番外編・病院放浪記 その1

2001年9月12日。
NY同時多発テロの翌日のことである。

店の電話が鳴った。私が出る。
「○○書店でございます」
「あの、KENの息子ですが」
「なんだ、どうしたの」
(いかにも息苦しげに)
「左の胸が……すごく痛くて…… 病院に行きたい……」

ヘッポコ兄が店に電話してくるなんて初めてのことだ。
この声の調子。
よっぽど具合が悪いのだろう。
私は、店の電話を使って救急車を呼び、超スピードで

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放浪親子

放浪親子

2003年。
私は不意に勉学意欲に駆られ、ヘッポコ兄と一緒に英検を受けてみようと思い立った。英語から離れて25年は経過している。そんな母親に負けたら、ヘッポコ兄も少しは焦ってくれるのではないか、という気持ちが少しあった。
2004年、年が明けてから私は英検の準備に励んだ。学生時代、一度も受けたことがない。「高校3年間で習う範囲」というから準2級ぐらいが妥当かなと思い、決めた。ヘッポコ兄は、中3の時

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彼が選ばない道、それが正しい道

2003年3月。中学校の卒業式を無事に終えたヘッポコ兄は、高校の教科書を購入するために、高校指定の本屋へ自転車で出かけて行った。

我が家は地下鉄沿線。
その指定の本屋はJR沿線。
我が家の最寄りJR駅からは一駅だが、その最寄りJR駅までは徒歩で10分ほどかかる。
自転車で行くのが一番速い。
(2020年追記:最寄り駅まで徒歩10分なんてあたりまえのことだったと転居して初めて知った)

「一緒に行

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奇跡の人

奇跡の人

ヘッポコ兄は、陸上部だけでなく演劇部にも所属していた。

文化祭で上演した「逃亡者」は、なかなかの出来だった。
特にメインになる2人の女子生徒の熱演が光り、区の大会で最優秀に選ばれ、なんと都大会まで進出してしまったのだ。
ただし、ヘッポコ兄は数少ない男子部員であり、3年生であるという理由から、いい役をいただいてはいたが決して芝居はうまくなかった。

さて、都大会である。
東京渋谷の児童会館ホールで

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二又道を直進する

二又道を直進する

2002年のある日、ヘッポコ兄宛てにハガキが届いた。
差出人は杉並区放置自転車集積場?

1ヶ月前、地下鉄で数駅先の模擬試験会場まで自転車で出かけたそうだ。
その帰り道、車輪の空気が抜け、ぶわぶわになり、疲れて乗って帰る自信がなくなり、家まで4駅という所で彼は自転車を乗り捨て地下鉄に乗って帰って来たのだそうだ。
それっきり自転車は1ヶ月以上も放置された。
信じられない。
置き去りにすれば、誰かが空

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ゴールデンウィークを真逆する

2002年頃に書いていた話です。
 
我が家の響良牙こと兄王子は中3である。来年は高校へ通う身となる。電車通学もままならないようでは困る。機会あるごとに一人で道を選ばせることにした。

ゴールデンウィークのある日、祖父母宅へ向かう駅からの道でヘッポコ兄に先頭を歩かせる。
目指すは私の実家である。
中3の子が、何度も行ったことのある祖父母宅に一人で歩いて行けないなどと誰が考えようか?

いつもは8割

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またの名を響良牙

またの名を響良牙

2002年頃に書いていた極度の方向音痴男の話です。
 
中3になる息子、ヘッポコの兄は極度の方向音痴である。
高橋留美子「らんま‪1/2‬」をご存知の方には「響良牙」というだけで、わかっていただけるだろう。
駅から一本道の場所へ行くのに30分は迷う。



さて、いよいよ受験生となった彼は春期講習のために新中野から恵比寿へ通う身となった。
いい年したデカい男の子に母親が付き添う。(初日だけ)
なぜ

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