デービスvsマーティン ボクシングを観る喜びがここにある

私はジャーボンテイ・デービスのボクシングを観るのが好きなんですよね。

現代のセオリーや定石無視の組み立てからタイミングを盗んだ途端に、素晴らしい攻撃のイマジネーションの一撃で試合を終わらせる、ボクシングの達人だと思っています。

普通のボクシングもできるんです。
もちろんそれは子供の頃からの長く素晴らしいアマキャリアで習得しているんですが、彼は自分のスタイル、自分のボクシングを確立しているんですね。

現在の彼はPPVのドル箱スターですが、相手の知名度が低くても多くの人がお金を払って観るのはデービスのボクシングに観る価値があるということなんでしょうね。

アメリカでのライト級の認識は軽量級で、選手も小さい、軽いといったイメージが強いものです。
それでもデービスがこれまで積み上げたノックアウトがすごく印象的なんですよね。
彼は相手をノックアウトする為にラウンドを追っていて、テンポイントマストシステムなんて全く気にかけていないように見えます。
非常に冷静なところも印象深いですね。

ボクシングのルールで戦っていますが、その思考は対戦相手と大分隔たりがあるのではないでしょうか。
試合を見ていてそのように感じるボクシングですが、もちろん彼なりのメソッドがあって、それを鑑みずに観ているといきなりとんでもなく派手なノックダウンが発生したように見えるものですから、とにかくダウンを期待して見ているアメリカのファンや会場のお客さんには大ウケするのだと思います。

私自身もデービスに対しては、こうしたらいいのになどと思わずに純粋に楽しみに観戦できます。
そういうボクサーは少ないのでボクシングを観る喜びというのを本当に感じられる選手なんですね。
デービスというのは長年ボクシングを見てきている人から、ただただノックアウトが見たいというファンまで皆を楽しませることができる現代のスター選手ですね。

一方で対戦者のフランク・マーティン。
そのスキルは垣間見せていましたが、これまでのようには残念ながらいきませんでしたね。
ニックネームのゴーストぶりをどこまで発揮できるかにも注目していたのですが。

ゴーストというとアメリカの感覚だと、触れられない、逃げられる、といったようなニュアンスだと思うんですが、昔、ウィリー・ペップというボクサーがいました。
イタリア系アメリカ人で1940年代から50年代にフェザー級で活躍したボクサーです。
そして歴史上私が見た中で一番ディフェンスが上手かったボクサーですね。
それでこのペップのニックネームがウィル・オ・ウィスプ、日本語で「鬼火」といわれてたんですね。
ゴーストと似たようなニュアンスです。

ペップの逸話に試合中1発もパンチを発することなく相手のパンチを全て避け切って、それに感嘆したジャッジ全員がそのラウンドをペップにつけた、というものがあったり…
繁華街で地面にハンカチをひいて、片足をハンカチの上に乗せて構え見物客に自分にパンチを当ててみろ、と。
足をハンカチから離すことなく避け切ってみせるよという大道芸をやったエピソードもあります。
このエピソード自体を知っている方もいるかと思うんですが、これをやったのがペップなんですね。

日本語だと幽霊とか鬼火がディフェンスの上手いボクサーのニックネームにはならないでしょうが、アメリカ人の感覚ではそういうニュアンスがあるのでしょうね。
日本でディフェンスの上手い人だとアンタッチャブルの川島敦志さんがすぐに浮かびますが、もっと直接的で物理的なイメージですね。
触れられない、というのは共通していますが。

さて、デービスの相手、次は誰になるのでしょうね。
本当はもっと早くロマチェンコとの試合を見たかったのですが、そう遠くない将来のロマチェンコとのお別れの予感から今はもう少しでも早く実現してほしい思いがありますが…

デービス自身はこれまで通り、戦いたい相手の名前も挙げず、保持タイトルが2番目王座でも気に留めず、対戦が決まった相手をノックアウトするだけなのでしょうね。

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