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【詩作日記】「異国の出来事 / アンカラへ」

「アンカラへ」

アンカラがそろそろ近くなる頃に
ハイウェイのパーキングエリアに入る
バスの外に出ると
強烈に冷たい風が容赦なく吹き付け
目を覚ましてくれた
時間は煙草一本分

ツアーの助手のアラジンが
やっぱり一目散に外に出て
煙草に火をつけていた

雪に埋もれた駐車場で
タイヤを鳴らしながら
なんとか外に出ようとしている車がいた
よく見れば
日本車だった

一本だけのハイウェイが
アンカラへの確かな道
一本だけど
とても力強く思える
けれども雪に覆われて
誰もが難儀している

周囲はたゞの雪原だが
所々に緑が見える
おそらくアンカラに近づくに連れて
緑は増えていくのかも知れない

この寒さは尋常じゃないと思いつゝ
しっかり煙草一本分無理に身体を冷やして
また暑いバスの中に戻る

バスは再びハイウェイを走り出し
予想を裏切るように雪原はいつまでも続いた
突然路肩に看板が見え始めたと思うと
次から次に増え
赤い屋根の建物が見えてくる

アンカラがそろそろ近い
きっと近づけばその分
暖かくなるのだろう


「アンカラへ」 詩集「異国の出来事」より
1997年アンカラへ向かうバスにて 2021年再推敲

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