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アメリカ最大の銀行であるJPモルガンチェースが暗号資産取引所を顧客として受け入れるというニュースはただ事ではない理由

先月のウォールストリートジャーナルは、総資産が2兆7,400億ドルにのぼるアメリカ最大の銀行であるJPモルガンチェース(JPMorgan Chase)が暗号資産の取引所であるコインベースとジェミニに銀行サービスを提供するという大きなニュースを報道しました。 この世界的な銀行大手による動きは二つの大きな意味をもたらします。

(1)銀行が改めて対暗号資産事業ビジネスの可能性を認識

暗号資産は本質的にリスクが高くさまざまな理由から銀行取引が不可能であると認識されていました。これは主に、国境を越えたマネーロンダリング・テロ資金および制裁の懸念を効果的に緩和または管理できないと認識されていることが原因です。また、暗号資産はさまざまな悪意のある活動、違法な活動、犯罪者の使用に焦点を当てた多くの報道から評判を課せれました。そんな状況銀行はリスクを取るを必要があるのかと言う疑問が残ります。

しかし、認識されているリスクのみに焦点を当てることは暗号資産市場の成長と潜在的なビジネス成長の機会を無視することを意味します。現在の暗号資産市場の時価総額は2720億ドルをはるかに超えています。現在ビットコインは、米ドル、英ポンド、ユーロなどの法定通貨を含めた世界で使用されている法定通貨上位10の”通貨”の1つです。同様に、暗号資産のイーサも使用されている世界の上位25の通貨にランク・インしており、南アフリカランドよりも広く流通しているとされています。

暗号資産市場全体の目覚ましい成長を評価することは銀行が暗号資産ビジネスへのアプローチを再検討する必要性を示します。近年、暗号資産へのアクセスも容易になりました。銀行と暗号資産取引所の間で毎年500億ドルが動いています。そのため、銀行が認識していない間接的なリスクが生じています。私たち個人のスマホ上の金融アプリの多くは暗号資産も商品として提供されています。 Revolut、Stripe、Robinhoodなどの企業はすべてユーザーフレンドリーで、金曜業界のデジタル化革命を促進しています。 COVID-19も世界中のデジタル化のトレンドを促進する役割も果たしています。JPMorganはこの動きに着目し大胆にも銀行の暗号資産ビジネスの世界に意図的かつ戦略的な動きをしました。 JPMorganだけでなく、業界にとっても歓迎すべき進歩です。

メッセージは明らかです。暗号資産ビジネスを顧客として受け入れるインセンティブが十分にあると言うことです。KYCが適切に行われておりマネーロンダリングとテロ資金調達のリスクが効果的に軽減されている場合、銀行取引が可能だと言うことです。
銀行取引にコインベースやジェミニなどと行った暗号資産ビジネスに提供することで、JPMorganは優れたビジョン、技術的な適応、柔軟性を実証しました。 これは、暗号資産取引所のオンボーディングに伴う関連リスクを効果的に管理するために必要な規制順守アーキテクチャが整っていることを示しています。 また、銀行が暗号資産市場が存続することを認識していることも示唆しています。 現在、銀行はこれまで以上にすべての暗号資産を「不良」またはリスクの高いものとして分類するのではなく、暗号資産ををよりよく理解し受け入れる事になるでしょう。

(2)規制に準拠している暗号資産取引所が金融機関の信頼を得ています
 
グローバル銀行も見方を変え、リスク選好度を適応させて暗号資産事業者を取り込んでいます。これは、暗号資産取引所が包括的なAMLコンプライアンスプログラムの設計と実装に投資した並外れた努力の証でもあります。CoinbaseとGeminiのように何よりもまず顧客だけでなく自社のビジネスも悪意のある行為者から守るという規制上の義務を真に先導してきました。リスク管理は常に新興市場および代替資産クラスで信頼を構築するための中核であり、暗号資産市場も例外ではありません。業界全体では、コンプライアンスの効果が大幅に向上しています。 2012年には、ビットコイントランザクションの35%が違法なトランザクションに起因していたのに対し、2020.2では1%未満が非合法でした。これは、堅牢な暗号資産コンプライアンスフレームワークの採用に一部起因する、大幅な削減です。バーを高く設定する暗号資産取引所のおかげで、暗号資産はもはや”汚い”言葉ではなくなりました。暗号市資産市場は長年にわたって大幅に成熟しており、暗号資産ビジネスもより効果的で金融機関並みのリスク管理システムを実装しています。取引所も金融機関グレードのコンプライアンスとリスク管理制御フレームワークを構築し、本質的にリスクの高い資産クラスをより適切に監視、スクリーニング、および管理しています。取引所は金融機関と同じ言語も話すようになっています:厳密なKnow Your Customer(KYC)およびCustomer Due Diligence(CDD)プロセスで顧客をオンボーディングします。取引のスクリーニングと監視、顧客リスクのセグメンテーション、独立監査、それに応じたスタッフのトレーニングに従事-基本的に銀行秘密法のすべての柱を遵守しています。これは銀行に安心感を与えます。

規制遵守を活用してビジネスの成長と発展を可能にしているGeminiとCoinbaseへの追加の称賛したいと思います。一部の暗号資産企業はコンプライアンスをビジネスへの負担と見なしていますが、この2社はビジネスの成長と規制コンプライアンスを明確に結びつけており、トップレベルの金融機関の信頼を確保しています。先進的な金融機関は最新の規制フレームワークの下ではクリプトアセットサービスプロバイダーは銀行とそれほど変わらないと考えてます。そして同様な取り組みをしている他の暗号資産ビジネスに励まされています。すべての暗号資産ビジネスが同じ「ハイリスク」カテゴリに分類されるわけではありません。取引所と銀行は怪しげなエンティティを追跡、監視、特定するためのツールを装備できるようになりました。現在は犯罪性への可視性は明確かつ簡単になりました。

規制や規制機関も世界的に成熟しています。 FATFの2019年6月の暗号資産ガイダンスも規制基準の開発と拡大を余儀なくされており、暗号資産ビジネスに銀行グレードのコンプライアンスを追求する原動力を与えています。規制当局からの明確性、具体性、ニュアンスがさらに高まるにつれ公共部門と民間部門の信頼関係とパートナーシップが生まれ、どちらも良い取り組みをしています。規制当局は、リスクベースのアプローチを暗号資産に適用する方法と適用する方法のルールと例を含む、直接的で疑問の余地のないガイダンスを提供しています。

ガイドラインとフレームワークが運用上テストされ実装されていく中、間違いなくさらに調整が必要になります。しかし、風向きはポジティブです。銀行は暗号資産ビジネスの受け入れ準備ができており、暗号資産ビジネスも銀行の要件を満たす準備ができています。

Elliptic(エリプティック)について
エリプティックは金融機関向けに暗号資産(仮想通貨)の取引に関するリスク評価等を行うソリューションを提供しています。暗号資産のコア技術であるブロックチェーンの取引履歴を解析し金融犯罪を特定するマネーロンダリング(資金洗浄)対策分野において、高い信頼を誇る世界のトップ企業です。

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