見出し画像

とても好きな短歌の記録(1)

気軽に歌集を読めない環境なので、ウェブサイトやXが頼りです。Xのブックマークはすぐに埋もれてしまって取り出せないので、コピペしておいた分だけでもすぐ見られるところに残しておきたいと思ってnote。雑な性格なので、順不同、出典もあったりなかったり、俳句も突然混じります。作者間違っていたらそっと教えていただけると嬉しいです…

水の底の寺院へ行つて来たよまだ時が睫毛にしづくしてゐる ╱林和清『匿名の森』
わたくしを骨まで識ってゐるひとと白く濁った参鶏湯(サムゲタン)食む/西鎮
(それぞれの春へ号砲)いっせいにめくられてゆく問題用紙/西鎮
口々に「これは大きい」「大きい」と助産師たちは春に言祝ぐ/小金森まきあたらしきいのちを胸に抱きたる夜明けに無量大数の雪 /小金森まき
三つ編みをといたきみから濃い海が薫って羽化が近いと知った/うすい
またひとつ呪いは解けてサーカスの虎は自分が虎だと気づく /うすい
ファスナーをあなたが上げてくれる日の背びれにも似た銀の航跡/うすい
氷柱花 いつかからだの真ん中で燃えだす花を持って生まれた/ うすい
子供とは球体ならんストローを吸ふときしんと寄り目となりぬ ╱小島ゆかり『月光公園』
「バニラ歯科」と「まりも整骨院」のあいだ抜け生徒は秘密の通学路ゆく/愛川弘文
ぼくたちの詩にふさわしい嘔吐あれ指でおさえる闇のみつばち ╱加藤治郎『ハレアカラ』
ローレルのかおりのようにきみがいま昇りつめたって嫉妬はしない/加藤治郎
見せられた日焼けの線に立ち止まる ここまでは夏、ここからは君/杜崎ひらく
冷蔵庫のひかりまぶしいキッチンでまだ真夜中の街を知らない/松尾唯花
夏の花が好きなら夏に死ぬらしく網戸にかける殺虫スプレー/松尾唯花
チワワインザカブの前かご シーズーオンザ手押し車 グッデイ /小藤 舟
白詰草で縊くくりたいと云ふので春になつたらなと返した/小藤 舟
「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が搖さぶる/堀合昇平『提案前夜』
宥(ゆる)されてわれは生みたし 硝子・貝・時計のやうに響きあふ子ら ╱水原紫苑『びあんか』
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております/山崎方代
人生のメニュウをひらき最初からアイスクリームにしたい朝です/藤本玲未『オーロラのお針子』
着ぐるみは白い毛だらけ生き残るぼくらの傷は商品になる/藤本玲未『オーロラのお針子』
十二月八億五日 晴れときどきテャヌェ ところにより強いンマュペメ/有無谷六次元
茸(きのこ)たちの月見の宴に招かれぬほのかに毒を持つものとして/石川美南『砂の降る教室』
死ぬことが悲しいだけではなかったこと 落ちて初めて燃ゆ流れ星/鳥さんの瞼
喜びでしっぽがちぎれそうな犬 わたしも精子の頃明るかった/鳥さんの瞼
手品師のかばんに暮らす白鳩の幻想的な職業規定/鳥さんの瞼
わたくしを一人忘れてゆく船の火星をめざす軌跡がきれい/鳥さんの瞼
単行本ほどのトースト裂きながら悪夢をぜんぶ話してみせて/山桜桃えみ
鰤しやぶをはしはしと食ふ 病をば告げられし人とひたぶるに食ふ/賀茂杏子
羽化をするようにわかめが広がって女は海と小さく歌う/汐見りら
溺れたとき太陽をちょっと飲んでしまってそれからあたしはずっと燃えている/汐見りら
悲鳴みたいに喋るひとから教わった月がたまに真っ赤になる理由/海月莉緒
だんだんと折りたたみ式になる母を広げに今日は田舎へ帰る/うみせりりこ
大雪の予報で早めに切りあげて以下余白みたいな夜がくる/音平まど
オフィーリア その後、しづかに腐りつつ身を引き千切らるる魚の群れに/月岡烏情
疲れたら洗濯物をとりこんで雲の上の歌声をわすれる/柴澤樹
体内にオリオン誕まれたるを秘す/時実新子
一度だけ見せてもらったことがあるあなたの奥に建つ青果店/石田犀
うつくしい青年がふとやってきて、冬は星座をしてる、といった/ぷくぷく
ぷつぷつと白子を噛んでゆく夜のわたしにはない臓器の甘み/カラスノ
孤独死を必然と呼ぶ角部屋の合鍵はそこ、アネモネの下/ナカムラロボ
サウナ室にしずかな音の丸時計なんだろうこの敗北感は/斉藤真伸『クラウン伍長』
まふたつに切り分けられた大根のまだ眠さうなはうを贖ふ/桔梗
調律を森の深くに待ってゐるピアノのごとくひとを待ちをり/門脇篤史
口紅がこわい、こわいと泣いていたあの子は今も水晶のまま/水鳥
Type-Cの差込口に上下など無くて荒野に寝転べば虹/梅鶏
桜は散る、梅はこぼれる 単線の駅であなたを待つ夕まぐれ/梅鶏
マーライオン泳いでほしいたてがみを濡らして陸に上がってほしい/椋鳥

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?