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村上春樹より村上龍のほうが面白いという話

毎年ノーベル文学賞候補にされては取れずに終わるということが風物詩になっている村上春樹だが正直自分は一度も読んだことがない。

今年も10月に発表されるノーベル文学賞で有力候補として挙げられている。文学賞とったとき自分は初めて読むかもしれないがそれでもあまり興味がない、逆に何を思って村上春樹を読みたがるのだろうかとさえ疑問に思う。


そもそも自分は流行の著作を読むということがほとんどないし「ハルキスト」といわれる人たちもただ村上春樹読んでかっけ~ってなりたいだけだろというひねくれた感情もある。

ハルキスト名乗ることが目的になってるんじゃないかと、そんな風に思うのだ。


本当に村上春樹が好きで読んでいる人はもちろんいるだろうし、そういうファンまで批判するつもりはもちろんないのだが現代作家の代表格として語られるほどの人なのかとは思う。

ピース又吉の火花が流行ったときも、それより昔のハリーポッターがはやったときも自分は読まなかった、どうもいまいち流行作を読むという感覚がわからないのだ。話題として読むならば別に話題なら読書じゃなくてもいいし、わざわざ長時間かけて話題のためだけに興味もない本読むのは疲れるでしょって考えの人が自分だ。

自分にとって面白そうな流行作があるならば読むけども、流行作だから読むという理由や動機は自分の中にはどうもない。


それでいうならば爆笑問題の太田光が村上龍とのラジオで、村上春樹を叩いていてさすが逆張り芸人だと思った。村上春樹はどこか離れた世界の空想を描いていて、村上龍はより現実を描いている、そんな話をしていた。


自分はそんな村上龍の方が圧倒的に好きだ、ダブル村上なら村上龍。

ブログでも再三書いているように自分は『愛と幻想のファシズム』という作品が非常に好きで、もうこれは厨二病必読のバイブルでないかとさえ思っている。

有名なのはエヴァンゲリオンの登場人物に愛と幻想のファシズムの登場キャラクターの名前が改変されて使われているということであり、あの時代のアニメ監督などはこの作品の影響を受けている人が多い。

実はエヴァンゲリオンも自分は見たことがない。

ネットで愛と幻想のファシズムの感想を調べたとき、「先にエヴァンゲリオンを見ていたからそのイメージになってしまった」と語っていてそれは面白いエピソードだなと思った。

またオードリー若林もこの作品が好きだと語っており、捻くれ者の間では評価が高い作品であることは間違いなさそうだ。


この作品は狩猟社率いる地下アングラ組織的グループが政権を獲得し革命を成し遂げるという一見すると厨二っぽい話ではあるが、どこかリアリティがあったり面白い知識が登場してなかなか読みごたえがある。

「ガチな人が書いた厨二ラノベ」という表現が的確だろうか、とにかく本物の芥川賞作家が書いたものなのでよくありがちなラノベとは全然違う。


小説の本質とは関係ないのだが、愛と幻想のファシズム内で魚を焼いて食べるというシーンが出てくる。主人公のトウジとゼロが北海道に映画撮影にいくというシーンだったと思う。なぜかその鮎(だったはず)を焼いて食べるシーンが非常に思い出に残っていて小説の中で登場する食べ物ってやたらおいしそうだなと感じることがある。

愛と幻想のファシズムはそういう飲食シーンも多く、お酒もよく出てくるので読んでいて食欲がかき立てられる。野鳥料理とか美味しそうだなと思ったしセレブリティビルの高級レストランで夜に食事しているシーンも情緒を感じさせる。

結構エグいシーンも多く、労組委員長の万田というキャラクターが薬物で廃人にさせられるシーンは個人的に爆笑したシーンの一つだ。


他の作品でいえば最近発売された「オールドテロリスト」を現在読んでいて、これは老人がテロをするという話なのだが中々面白い。こちらもまた食べるシーンが登場するのだが、老人が集まって薄暗い部屋でいつも食事をしたりお酒を飲んでいるというシーンが個人的に好きで、そういう老後面白そうだなぁとも感じた。

逆に主人公が貧しい部屋で安酒を飲んでいたという時代の話や、そういう惨めで貧相な雰囲気も見どころでそんなところまで描くのかというところに村上龍の作家としての凄さを感じる。

主人公が思想や哲学的なことを語るのも面白く、「芸術家は社会貢献など考えるべきではない」みたいな話もなんとなく印象に残っている。


次に読むとしたら「半島を出よ」だろうか、これは本当に読みたいので明日にでも書店で探してきたいほどだ。実は村上龍が好きと言っておきながらすべての作品をよんでいるわけではないのだ。


ちなみに「愛と幻想のファシズム」については二度読んでいるのだが、一回目に読んだのは自分が大学生になりたての頃でそのころにワンルームの部屋で読んでいたことが懐かしい。二度目に読んだのはつい最近で、禁酒期間中に虚しく読んでいた。虚しい人生の中で小説の世界のその空間が拠り所となっていたから、その世界が今も懐かしく感じるのだろう。

まさに「幻想」の世界観があり、時代背景が1980年代末ということもありどこか美しい幻想を感じさせる。

もし厨二病的な作品を求めている人がいるのならば、最近のなろう系作家のライトノベルなんかよりもぜひ村上龍のほうがおすすめだと自分は考えている。村上春樹よりも、最近のラノベよりも村上龍、それぐらいに好きな作家だ。

面白いとおもたら銭投げてけや