健康積立保険

帰宅したヤスコはTVを付け、何となく帰路にあった古びたポスターの「今の健康を未来の健康に!」「その健康、持て余していませんか?」「全世界の90%以上が利用!」を思い出し、そろそろ月の積立に行かないとな、と思いながら家事をしていた
「…それでは次のニュースです。世界的にアミドラル・エナジー、いわゆる健康の管理を行っていた株式会社アミドラルの社長が、保管されていた健康を不正利用した容疑で逮捕されました…」
「…え?」
一瞬、聞き間違いかと彼女は思った
「…調べに対し、難病の妻の治療のためだった、と容疑を認めています…」
彼女はTVに映る「倒産は時間の問題!?」というテロップや「俺達の健康を返せ!」と憤る人を、ただ呆然と見るしかなかった

それからしばらくして会社は倒産し、しかもその際に健康関連技術が流出してしまった
今では小型機器による健康盗難、動物などの不正健康、エナジードリンク大量摂取者からの脱法健康、許可を得ず取得した違法健康、そしてそれらを販売する闇健康屋…と、危惧された健康崩壊が発生していたのだった

ヤスコは健康為替に来ていた
ここではその日のレートにより、例えば普通の成人女性100と成人男性90のように健康をやり取りするのである
旅行に行く数日前になって腰をやってしまった両親の治療に少しでも健康が欲しかったのだ
採取自体は数秒で終わったのだが、健康確認をしていた男の手が止まった
「…ヤスコさん…こういった場にいらっしゃるのは初めてですか…?」
「え?…はい、保険積立はしてましたけど月の採取前にあんなことがあって…それが何か?」
「なるほど…それでですか…!」
「えっと、なにか問題ありました…?」
「いいえ…むしろ逆!当時の機器ではわからなかったんでしょうが…あなたの健康はとても上質!同年代のアスリート成人男性以上です!これはもう…女神!そう、あなたは健康の女神です!!」
「健康の…女神…?」

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