ゾンビは優秀な○○です。

はるか昔、ゾンビウィルスの流行により大量発生したゾンビ達により、シェルター都市に逃げ込んだ人類は、今やそれを忘れたように平和を謳歌していた
普通の人間より力が強く、耐久性があり、疲れを知らず、今や人間より多いとされるゾンビ達…そんなものに勝てるわけはない…とみな諦めているのだ…
しかし…耐久性があり、疲れを知らないゾンビ達は…実のところ、優秀極まりない素材の塊だったのだ!
革は服飾品や家財道具に、肉は肥料に、骨は建築資材に、血は燃料に…と捨てる所の一切ないことがわかった途端、ゾンビ狩りが始まった
そして、狩って、狩られて、狩って、さらに狩って…今やゾンビは絶滅しようとしていたのだった…

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今日も元老院から新しいゾンビを早く調達するようお達しがあったが、先程帰ってきた捕獲隊はやはり空振りだった
私は窓から町並みを眺める
日の出入りを模した照明、遠くには畑と牧場、小川は循環水で清流を保ち、と、理想的環境である
この平和を維持するには一刻も早くゾンビを調達しなければ…それには…
「誰かを…殺さなければ…」
殺し、ゾンビにする…それしかないのだ…

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どういうことだどういうことだどういうことだ!
俺は物陰に隠れながらなんとか落ち着こうと…無理だこんなの!
さっきから少しの物音にもビビってるぐらいだぞ!

それでも時間が経ってなんとか現状を整理できるようになった
まずスゲー怪しい奴らが家に来て…ヤバそうだったから逃げて…もしかして噂になってる人攫って強制労働所だかに連れて行く奴らか?って考えながら逃げて…そして…
俺はもう一度右手に持った『それ』を見る
俺の…左腕だ
奴らが後ろから…たぶん銃とかいうやつを…撃ってきて…左の肩に当たったと思ったら…もげて…でも痛みはないし…
それに、それが野良猫の頭にも当たって…でもそいつピンピンしてて…
俺は認めたくない考えをつい口に出してしまった
「俺は…俺達は…ゾンビだった…?」

【続く】

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