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#インタビュー
interview Becca Stevens - Maple to Paper:Serving a Song=曲に仕えること
ベッカ・スティーヴンスはどんなアーティストだろうか? ギターやチャランゴ(南米のウクレレみたいな楽器)を弾きながら歌う彼女は《シンガーソングライター》然とした佇まいをしている。 ただ、彼女のことをずっと追っていると、ギターを持ってバンドの真ん中で歌っている彼女は活動の中のひとつの側面でしかなく、どちらかというと《コンポーザー》なんじゃなかろうかと思うようになった。 そもそも最初から彼女は弾き語り的な曲を書いていたわけではなかった。バンド全員でのアンサンブルを重視し、器楽
interview Antonio Loureiro:エレクトロニカ、アマゾン先住民、北東部のダンス音楽などの影響を反映する初期2作
2010年ごろ、アントニオ・ロウレイロという才能が発見されたときのことはよく覚えている。2010年に1stを高橋健太郎が紹介したことで彼のことが日本でも知られるようになったのだが、僕が聴き始めたのはセカンドアルバムの『So』からだった。 ブラジルのミルトン・ナシメント周辺コミュニティのサウンドに通じるもの、もしくは当時日本で話題になっていたアルゼンチンの新しい世代によるフォルクローレの作品群とも共通するものを感じただけでなく、2000年以降のアメリカのジャズを思わせる作編曲
interview Kurt Rosenwinkel & Shun Ishiwaka 2016:カート・ローゼンウィンケルと石若駿の対話
00年代以降に書かれたジャズ史に関して言えば、21世紀の最重要人物の中にカート・ローゼンウィンケルの名前があるのは当たり前だろう。むしろその名前がなければ、そのジャズ史は疑わしいと思っていい。 ブラッド・メルドーやマーク・ターナー、ジョシュア・レッドマン、ブライアン・ブレイドらと90~00年代に彼らがもたらした革新の大きさは現在のシーンを見てみれば誰の目にも明らかだ。同世代のイーサン・アイヴァーソンや、その下の世代のロバート・グラスパーなど、スモールズやヴァンガードで彼らの
interview Tomeka Reid:チェロでジャズを弾くこと、作曲/キュレーション論、AACMについて(1,5000字)
僕がトミーカ・リードに注目し始めたのは彼女が自身のカルテットを結成して作品をリリースし始めたころだった。トミーカのチェロとメアリー・ハルヴァーソンのギターをフロントに、ジェイソン・レブキのベースとトマ・フジワラのドラムがリズムセクションを担うこのグループはそれぞれの演奏者の演奏は言うまでもないが、同時に楽曲の素晴らしさがこのグループを特別なものにしていた。 個々の演奏を最大限に反映する作りになっていて、それぞれの演奏のキャラクターがそのまま楽曲の個性に繋がっているのだが、特
interview KEYON HARROLD"Foreverland":シンプルなものを作ろうとすればプロセスは複雑になる(7,500字)
ネオソウルが好きな人なら、ディアンジェロの来日公演でロイ・ハーグローヴの後任として演奏していたトランペット奏者を覚えている人も少なくないだろう。そのポジションはキーヨン・ハロルドの立ち位置をわかりやすく示している。ディアンジェロのみならずマックスウェルやビヨンセ、PJモートン、コモンなど、多くのアーティストがキーヨンを起用してきたからだ。彼はロバート・グラスパー世代のトップ・トランペット奏者として、R&Bやヒップホップを彩るホーンセクションの一角を担ってきた。 また彼はロイ
short interview Mary Halvorson:about Tomeka Reid for Tomeka Reid Japan Tour 2024
AACMに所属し、シカゴを拠点に活動するチェロ奏者トミーカ・リードが遂に来日し、ツアーを行います。 しかも、現代ジャズギターの奇才メアリー・ハルヴォーソンを含む、彼女のカルテットでの来日です。 今回、来日に際してメアリー・ハルヴォーソンとトミーカ・リードにそれぞれインタビューを行いました。インタビューの公開に先立って、メアリー・ハルヴォーソンからトミーカ・リードについていくつかの質問に答えてもらいました。ツアーへの期待が膨らむ皆様に向けて、そちらを先に公開します。 取材
interview Jun Iida - Evergreen:日系アメリカ人トランぺッターとNujabesとの出会い(2,900字)
新譜をチェックしていたら、このアートワークが目に飛び込んできた。 和服の若者がトランペットを持っている写真なのだが、なんとなく写真の感じも含めて日本で作ったアートワークじゃない予感がした。そこで、はっと思い出した。「あ、この人、会ったことあるな…」 僕はイイダ・ジュンさんと東京で会っていた。オーブリー・ジョンソンというジャズ・ヴォーカリストが日本に来た時に彼女たちと食事をしたのだが、その時に彼女の友人のひとりとしてその場にいたのがイイダさんだった。 普通に「はじめまして
interview Taylor Eigsti:『Daylight At Midnight』からグラミー受賞、『Plot Armor』まで
21世紀以降のジャズを振り返って、特に印象的なアルバムをリストアップしていくとしたらテイラー・アイグスティ『Daylight At Midnight』は必ず入るだろう。 ルーファス・ウェインライト、ニック・ドレイク、エリオット・スミス、イモジェン・ヒープ、コールドプレイ、ミュートマスのカヴァーを含むこのアルバムにはジャズがより自由になり、どんどんハイブリッドになっていった2010年代のムードが完ぺきに収められている。ブラッド・メルドーがレディオヘッドやニック・ドレイクをピア
interview AMARO FREITAS"Y'Y":先住民族について話し、それをポリリズムを使って表現することは私の使命
2023年のFESTIVAL FRUEZINHOでの来日公演で多くのリスナーを驚かせたアマーロ・フレイタス。あの日のパフォーマンスはこれまでアマーロのアルバムを聴いてきた人にとってはそれなりに驚きのあるものだったのではなかろうか。いくつかの曲で彼はプリペアドピアノを駆使して、自身の音をループさせ、時にピアノを打楽器のように使いビートを組み立て、時にピアノから神秘的な響きを鳴らし、不思議な世界を作り上げていた。今思えばあれは2024年の新作『Y’Y』のサウンドを先出ししたような