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Jazz The New Chapter for Web

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シンコーミュージックから発売される『Jazz The New Chapter 』シリーズに関する記事や誌面に載せきれなかった未公開インタビューや掲載インタビューのアウトテイクなど… もっと読む
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#ブラジル

interview Jasmin Godoy:クルビ・ダ・エスキーナと現代ジャズが融合した傑作『Show Me The Way』(8,000字)

2023年、ジャスミン・ゴドイというアーティストの音源が送られてきた。それは聴いた瞬間引き込まれるような素晴らしい内容だった。ブラジルの音楽、特にミナスの音楽の要素はある。だが、それだけでなく、2010年代以降、グローバルに同時進行で進化し、流布していった現代のジャズとその周辺の要素もある。2010年代以降、ミナスのコミュニティからはアントニオ・ロウレイロらが出てきて、2010年代末、ブラジル北東部のペルナンブーコからアマーロ・フレイタスが出てきた。ブラジル人たちがどんどんオ

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interview AMARO FREITAS"Y'Y":先住民族について話し、それをポリリズムを使って表現することは私の使命

2023年のFESTIVAL FRUEZINHOでの来日公演で多くのリスナーを驚かせたアマーロ・フレイタス。あの日のパフォーマンスはこれまでアマーロのアルバムを聴いてきた人にとってはそれなりに驚きのあるものだったのではなかろうか。いくつかの曲で彼はプリペアドピアノを駆使して、自身の音をループさせ、時にピアノを打楽器のように使いビートを組み立て、時にピアノから神秘的な響きを鳴らし、不思議な世界を作り上げていた。今思えばあれは2024年の新作『Y’Y』のサウンドを先出ししたような

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interview Lourenco Rebetez:レチエレスの音楽ではオーケストラの中でリズムが爆発するように多くの音と交わる

僕がブラジルの音楽の中でもアフロブラジレイロの音楽へ関心を強く持ったきっかけは、2016年にロウレンソ・ヘベッチスという作曲家でギタリストが発表したアルバム『O Corpo de Dentro』だった。 ギタリストとしてはカート・ローゼンウィンケル以降の現代ジャズのスタイルもあれば、アイザイア・シャーキー的なネオソウルのギターも聴こえていた。つまり、2010年代におけるギタリストの必修科目と言えるスタイルを兼ね備えていると感じられた。また作曲の面ではギター・カルテットを核に

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Interview Xenia França:アフロブラジレイロとしての誇り、ステレオタイプからの超克を込めたスピリチュアルな傑作を語る

シェニア・フランサの1作目『Xenia』は鮮烈だった。ロバート・グラスパーやホセ・ジェイムズに端を発し、そこに追随するかのようにハイエイタス・カイヨーテやジ・インターネット、ムーンチャイルドらがジャズ×ネオソウルの再解釈を行っていた2010年代。ブラジルの北東部、アフリカ系ブラジル人=アフロブラジレイロの人口がブラジルで最も多く、その文化の中にもアフリカ系の影響が色濃く残っているバイーア州に生まれたシェニア・フランサは、そんなジャズ×ネオソウルの流れにアフロブラジレイロの音楽

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interview SYLVIO FRAGA:現代アフロブラジレイロ・ジャズの気鋭レーベルを率いる奇才が語るホシナンチとレチエレス

これまで歴史は欧米の白人中心の視点や価値観で書かれてきた。それをアフリカ系やアジア系も含めたあらゆる人々の視点も考慮した上で、再び編み直そうという試みが世界中で増えていることは多くの人が感じていることだろう。それは音楽においてもかなり顕著で、過小評価されてきたり、失われていたヘリテージ(文化遺産)の価値を引き上げ、ふさわしい評価を与えようとする流れは年を追うごとに強まっている。アメリカの状況を追っていると、アフリカ系アメリカ人によるヘリテージの価値を見直す動きは日々行われてい

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interview JOSE ARIMATEA - Brejo Das Almas:バイーア×モーダルの新たなアフロブラジレイロ・ジャズ

ブラジルのリオデジャネイロにあるホシナンチは今、最も面白いレーベルのひとつだと思う。 ホシナンチはシンガー・ソングライターでギタリスト、詩人で作家でもあるシルヴィオ・フラーガが2010年代に設立し、運営している新しいレーベルだ。リオに構えた自身のスタジオを拠点に、レーベル独自のサウンドを追求している。様々な作品をリリースしているが、レーベルのイメージを大きく高めたのは2019年から始まったレチエレス・レイチ関連作のリリースだろう。シルヴィオとレチエレス・レイチのコラボによる

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interview Àbáse - Laroyê: カンドンブレからバイレファンキまで。ブラジルの今を捉えた音によるドキュメンタリー

Abaseは謎のプロジェクトだった。 僕は2019年にリリースされた『Invocation』で知った。アフロビートへの造詣の深さが聴こえてくるし、演奏もプロダクションもクオリティが高く、すぐに愛聴盤になった。ただ、Abaseを主宰するSzabolcs Bognárの活動拠点がUSでもUKでもなく、ハンガリーってこともあり、彼がどんなミュージシャンなのかの情報はほとんどなく、よくわからないままだった。 2021年には『Laroye』をリリースする。アフロビート系のプロジェク

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interview Rafael Martini:そもそもブラジルの音楽はシステムから外れた方法で作られている

 2010年代初頭にブラジルの新世代が発見され、「ミナス新世代」として日本に紹介された。そのきっかけはマルチ奏者のアントニオ・ロウレイロ。彼の音楽の新鮮さはすぐにリスナーの間に広がり、彼と共演しているブラジルの同世代の豊かな才能たちが芋づる式に発見されていった。彼らの何人かは来日も果たしたし、アレシャンドリ・アンドレスやハファエル・マルチニらに関しては日本盤のリリースもあった。2010年代半ばには現代ジャズの最重要人物の一人でもあるギタリストのカート・ローゼンウィンケルが自作

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Interview Aubrey Johnson:噓をつかず、自分らしくジョニ・ミッチェルやビリー・アイリッシュをカヴァーする方法

僕はオーブリー・ジョンソンというヴォーカリストのことはパット・メセニー・グループの名ピアニストのライル・メイズが総合プロデュースしたアルバムで2020年にデビューしているジャズ・ヴォーカリストということで知った。 ポップさと現代ジャズ的な作編曲の面白さ、そして、カヴァー曲のセンスの良さが合いまった良作で、選曲をする時に何度もここから選んだりしていた。なにせエグベルト・ジスモンチ「Karate」やエドゥ・ロボ「Beatriz」といった捻りのある選曲のブラジル音楽から、ビル・エ

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Interview Marcelo Galter:アフロブラジル音楽において重要なのはメロディやリズムだけでなく独特の訛り

アマロ・フレイタスのインタビューを機に僕はブラジル北東部バイーア州やペルナンブーコ州のアフリカ系ブラジル人=アフロブラジレイロの音楽をリサーチしている。少しずつではあるがようやく彼らの音楽のことが見えてきた。 そもそも僕は彼の音楽にブラジル音楽のローカルな部分と、現代的でユニバーサルな部分が同居しているところに関心を持っていた。 西アフリカのヨルバに由来するブラジルの宗教音楽カンドンブレがあらゆるブラジル音楽の源流であることにフォーカスしつつも、そのカンドンブレ由来の要

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Interview Orkestra Rumpilezz:about "Moacir de Todos os Santos" & Letieres Leite - レチエレス・レイチによるアフロブラジル音楽の革新

イギリスのシャバカ・ハッチングスやアメリカのクリスチャン・スコットといったジャズ・ミュージシャンたちが“ディアスポラ”について話をしていたことがある。 奴隷として連れてこられたアフリカ人の末裔であり、現在のイギリスやアメリカを生きるシャバカやクリスチャンは、ロンドンもしくはニューオーリンズからカリブ海を経て西アフリカへと、自らの祖先に思いを馳せるようにルーツを遡るような音楽を構想し、演奏する。ゴスペルやセカンドライン、カリプソやレゲエ、アフロビート、サンテリアやブードゥー

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interview AMARO FREITAS『Sankofa』:我々黒人の祖先、自然、そして、音から受け継がれるものを讃える音楽

2010年代にブラジル音楽が面白くなっているという話はアントニ・ロウレイロらが話題になったこともあり、それなりに少なくない人が知っている話かもしれない。 彼らの特徴としては、21世紀以降のジャズの文脈を押さえていたこと。その結果、前述のロウレイロやペドロ・マルチンスらがアメリカのジャズ・ミュージシャンたちとコラボするようになっていった。日本における”ブラジルの新しい世代によるジャズ”のイメージは彼らが担うようになっていた。 とはいえ、ブラジルは広い。才能豊かなミュージシャ

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Interview Gretchen Parlato『Flor』-花というテーマに込めた美しさ、生、死、目覚め、女性としての自分

以前、グレッチェン・パーラトの編集盤がリリースされたとき、僕は 「グレッチェンの声が聴こえるところに行けば、そこにはいつも新しいジャズが鳴っている。」 とコメントを寄せた。 2010年代に開花したハイブリッドなジャズの文脈において、「声」=ヴォーカリストの重要性が語られることは多いが、その中でグレッチェンの存在感は絶大だった。グレッチェンが起用されているアルバムを探して、そこに参加しているミュージシャンを追っていけば、2010年代のジャズの面白いところをまとめた見取り図

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21世紀のブラジリアン・ジャズ ディスクガイド with PLAYLIST

日本では2010年ごろ、アントニオ・ロウレイロの1stが(音楽評論家の高橋健太郎により)発見されたことから徐々にブラジルの音楽シーンの新しい世代に注目が集まるようになった。そこからアントニオ・ロウレイロを中心としたミナスやサンパウロのミュージシャンたちによるシーンの存在が明らかになり、ハファエル・マルチニやフレデリコ・エリオドロら、個々のミュージシャンについても情報が届くようになっていった。 その後、アントニオ・ロウレイロやハファエル・マルチニらが日本のレーベルからアルバム

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