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柳樂光隆の音楽評論

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柳樂光隆が書いた音楽に関する論考的なものを中心に。ここだけに公開するインタビューもあります。
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2019年1月の記事一覧

スピリチュアルジャズって何? - カマシ・ワシントン以降、多用されるキーワード”Spiritual Jazz”のこと

00年代の始めごろの僕は、家ではロックやテクノやヒップホップも聴きながら、クラブにもたまに行きながら、大学の近くのジャズ喫茶に通ってはジャズを聴いていた。ジャズ喫茶の店主と仲良くなってからは、レコード屋に行っては、ジャズを買い、ジャズ喫茶に持っていって聴かせてもらったりしていた。もちろん、レアグルーヴも聴いたし、ブルーノートもプレステッジも、フリージャズもヨーロッパジャズも聴いた。その中で、ジャズ喫茶の店主やお客さんとの会話が最も盛り上がるのが、インパルス期のジョン・コルトレ

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名盤はいつまでも名盤? 書き換えられ続けるジャズ史 by 柳樂光隆

僕はここ20年ほど、ジャズを中心に音楽を聴いている。それなりの期間、それなりの量を聴いてきた中で、その音楽の価値や意味については度々考える。価値は普遍なのか、その価値は揺らがないのか、つまり、名盤はいつまでも名盤なのかのようなこと、についてだ。 ジャズという音楽に関して言えば、ジャズ史における偉大な巨人がいて、彼らが作った絶対的な名盤があり、それに沿って聴かれているというイメージを持つ人も多い。つまりルイ・アームストロングがいて、チャーリー・パーカーがいて、マイルス・デイビ