賢いのが良い事だとは限らない

私は零細ベンチャー企業歴が長いのだが、前前職は割と知名度の高い会社ではあり、名物社長として度々脚光を浴びている人が経営していたため、大変凄いのだろうとある種の夢を見ていた。

フタを開けてみれば、こんなに頭の悪い社長は見たことがない…と驚愕するような経営戦略ゼロの感性丸出し型経営だったのだが。

多分、社長は軽度アスペルガー障害の人だったと思う。

そのため、呆れるほど人から利用され続けており、口車に乗ってバカ高いコンサルを付けられたり、明らかに不当な物件を契約させられていたり、人を見る目が皆無のためサイコパスを重用して何度も横領されるなどしており、すっかり猜疑心の強いバカが出来上がっていた。

これほど弱い頭脳でどうやってここまで会社をデカくしたのか?と不思議に思っていたのだが、起業から数年は神懸り的なマーケティング施策を打てていたらしい。
まあ、それは社長のたまたまの思いつきがマーケティング的にツボだったからという事なのだが、業界的にはそれ以前/それ以後ぐらいのインパクトがあり、それまでの常識を覆すほどだったらしい。
起業後4〜5年ぐらいまでは順調だったのだが、やはり頭の悪さと独善性でだんだんとうまくいかなくなり、私が入社する頃には10年近く赤字が続く状態になっていた。

ただし、ひとたび獲得した知名度はなかなか衰える事がないらしく、不思議と倒れそうになる度にどこかから救いの手が差し伸べられるのだという。

成功者の最大の能力は「」だと言われているが、まさしくそれを体現するような人だった。

そんな訳で入社後、数日で会社を…と言うよりは社長を見限り、次のステップへ進む為の技能獲得に邁進していたのだが、コロナ禍で次々と同僚が去っていった影響もあってかなりの裁量を与えられていたため、仕事としては過去一面白かった。
給与は低かったが。

その後、私と入れ替わりのように賢いマンという最強社員が入社するのだが、まあそんなところも「持ってる」人だと思う。

なお、前職の会長も創業者であり、猥褻で捕まるようなアレな人ではあったが、立志伝中の人物としてぼちぼち有名ではあったらしい。
彼も同じく、やはり頭は良くないのだが、かつてはなにかしら神懸り的な勢いがあったのだろう。

これまで最も賢かったのはスキル偏差値60の会社の社長だったと思うのだが、経営は最もうまくいっておらず、数多の優秀な人材を輩出はしたが在籍中に会社が無くなってしまうほどだった。
ITという言葉がない時代からIT企業を作ってきた人なのだが、運のなさを感じるのと慎重過ぎるきらいがあり、失敗したくないあまりに思いきった決断も出来ず、沈んでいったのだと思う。

経営者はバカほどアタリを引きやすいのかもしれない。


※こんな事を書いてはいるが、前前職についてはそれほど悪く思っておらず、むしろ感謝している。
経営者不在の状態で平社員同然の頭しかない人々が無駄にマウントを取り合う不毛な姿を見て、経営者として孤軍奮闘している人の方がよほどマシであったなと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?