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プレゼント目当ての人しか集まらない?コミュニティ集客における課題の解決策とは


プレゼントなどのインセンティブは集客に有効?

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
前回は、コミュニティ立ち上げ期における集客のためのインセンティブや広告費の必要性について解説しました。

しかし、この方法では「プレゼント目当てだけの人ばかり集まってしまうのでは?」と疑問に思うかもしれません。確かに、プレゼントなどに惹かれて会員登録をした人は、コミュニティの本来の目的である商品やサービスに対するコメントや、ファン同士の意見交換には無関心かもしれません。さて、どうしたらよいでしょうか?

解決策のひとつは、インセンティブ自体で企業や商品・サービス、運営するコミュニティの価値を訴求する方法です。カゴメが運営する「&KAGOME」ではコミュニティ開設当時、「カゴメにしか提供できない特別なトマトの苗」をキャンペーンインセンティブにして、カゴメらしさを前面に出しました 。すぐに食べたり、飲んだりする商品とは異なり、数か月にわたる「栽培」や、その先にある「収穫」という「体験」をプレゼントにしたわけです。詳しくは、前回の記事をご覧くださいね。

類似の取り組みは他のコミュニティにも見られます。関東近郊の1都7県の生協とその連合会で構成される「コープデリ」が運営するコミュニティ「コープ・デリシェ」では、コープが展開する各種商品のモニター企画であるサンプルラボをはじめ、2020年から2年間、アンバサダー施策として「手作り味噌企画」を実施しました。現在も「コープデリ」が扱う「みそづくりセット」を使っておみそを仕込んでいる様子や、おみそができあがるまでをお写真に撮って投稿しシェアするコーナーが人気です。

また、マルハニチロが運営するコミュニティ「Oishiine!!(おいしいね!!)」では、毎日1名に今月のおすすめ商品があたる、「ラッキーくじ」を実施しています。

「コープ・デリシェ」はカゴメ同様「体験」を提供しているのに加えて、「味噌」という華やかさは無いものの、生活に密着した商品を取り上げ、コープ・デリシェならではの企画を打ち出しています。また、「Oishiine!!(おいしいね!!)」のラッキーくじは、1日1回引けて、その場で当たりが分かるので、コミュニティに入ったばかりの人が馴染みやすいコンテンツと言えます。それぞれの特徴を最大限に活かしたインセンティブ企画は、たとえプレゼント目当てで会員登録したとしても、あとから興味を持ってもらえる可能性があるのではないでしょうか。

コミュニティ会員登録後のアクションを評価する

インセンティブ目的で流入した会員へのもうひとつの対策は、「会員登録後のアクションを計測して、企画自体の有効性を評価する」です。まず、その会員がどのサイトを経由して会員登録したか(または、直接検索してきたか)、アクセス元を把握することからはじめます。

例えば、プレゼントキャンペーンを告知する広告を出稿していたとすると、その広告経由でアクセスして会員になったのか、または他の経路だったのかを確認します。Google Analyticsをはじめ、お使いのアクセス解析ツールやCMS(Contents Management System)などで計測できるはずです。そして会員データのなかに、「どこからのアクセスで会員となったのか」を記録しておくことも必要です。

そして、一定期間のコミュニティ運営を経たあと、アクセス経路グループごとにコミュニティ上でのアクション実績を集計してみましょう。アクセス経路によって、アクションする間隔や回数、反応するコンテンツやテーマに違いは無いでしょうか?この違いを、インセンティブや広告出稿などの施策はもちろん、個々の会員がコミュニティに無関心かどうかの評価にするのです。プレゼントキャンペーンがきっかけで会員登録したとしても、他の会員と同等のアクションが見られれば、集客したキャンペーンや入ってきた会員に問題はありません。

しかし、会員登録後にコミュニティへのアクセスやログインすら無い、またはすぐに退会するなどの傾向が見られれば、その流入経路やキャンペーンの方法などに問題があるということですから、見直しが必要です。また、無関心な会員については、非優良会員として識別(フラグ立て)したほうがいいでしょう。このようにコミュニティでは、会員となった経緯やきっかけなどと紐づけて、コミュニティ内での個々の活動履歴をデータとして捕捉することが重要なのです。

もしも、懸賞サイトに掲載されてしまったら

企業のプレゼントキャンペーンは、懸賞サイトに掲載されることがあります。「プレゼントの応募が突然増えたな」と感じて流入経路を見てみると、懸賞サイトから流入していたケースも多々あります。これをネガティブととらえるかどうか?それは前述の通り、そこから流入した会員のコミュニティ内でのアクションにかかってくるでしょう。

私も前職でコミュニティ運営に携わっていたとき、懸賞サイト経由でのキャンペーン応募急増を経験しました。懸賞サイトから流入した会員のその後のコミュニティ内のアクション率を既存会員と比較してみたところ、あまり違いが無かったので、「これはこれでOK」と評価した記憶があります。

一般的に懸賞サイトというと、特売品や安売り品だけを購入するチェリーピッカーのような人たちが集まる場という印象を持つかもしれません。しかし、ここで論じている企業側のキャンペーンは、いわゆる「懸賞」という形態ではなく、商品購入や来店などを前提とする「取引に付随」するものを指しています。

したがって、懸賞サイトから応募する人は、どのキャンペーンを選ぶかという過程において、ある程度自分の興味関心のあるものを前提にしているはずです。そういったキャンペーンテーマと応募の前提が、コミュニティ会員になったあとのアクションに繋がってくるのだと思います。いずれにせよ、それぞれの会員の興味関心を満たすテーマ設定やコンテンツ提供が重要になるでしょう。

「企業コミュニティQ&A」第6回まとめ

今回は、前回ご紹介した「コミュニティへの集客」という課題の補足として、プレゼントなどのインセンティブで集まった会員が、企業にとって有益な「顧客」であるかどうかについて書いてみました。企業にとっての顧客や顧客予備軍(潜在顧客)は、言うまでもなく多様な価値観を持っているので、必ずしもコミュニティ内でお互いが「有益な関係」になるとは限りません。

企業は、その顧客や顧客予備群の多様な価値観を感じ取り、いかに自社のマーケティングに反映していくかが重要です。さまざまな経路からのコミュニティへの流入は、多様な価値観に触れる方法のひとつかもしれません。集客施策に加え、アクセスや行動履歴の分析・評価を繰り返しながら、コミュニティの質を高めていくのも大切だと思います。
次回もお楽しみに。