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記憶のメカニズムを活用!コミュニティでの「体験」が紡ぐ、顧客と企業の関係

長期記憶と短期記憶

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。

みなさん、学生時代を思い出してください。
テスト前日に何も準備していなくて、焦って徹夜したことがあるのではないでしょうか。でも、この「一夜漬け」、記憶のメカニズム上は効果が薄いと言われていますよね。人間の記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があり、長期記憶として脳に残すためには睡眠が必要なのだとか。
したがって、一夜漬けで頭に詰め込んでも短期記憶にしかならず、テストが始まる頃にはきれいさっぱり忘れてしまっている…なんてこともあるかもしれません。

マーケティングの面でも、この長期記憶と短期記憶のメカニズムを知っておくべきだと思います。というのも、TVCMや屋外広告、店頭POPなどマーケティングで構築する顧客接点は、お客様との一瞬の出会いのチャンスを捉えて、「記憶」に残らなければ意味がないからです。

長期記憶と短期記憶のうち、短期記憶の方は、目や耳といった感情レジスターに入ってきた情報の中で注意が向けられたものだけを選別し、しかも入ってきた情報の9割以上をわずか15秒のうちに忘れてしまうのだそうです。顧客の記憶に残るのは、至難の業であり、狭き門であるといえますね。

高額なマーケティング費用をかけてメッセージを発信しても、すぐに忘れられてしまえば意味がありません。よって企業は、長期記憶に残るためにどうすればよいかを考え、マーケティング施策の試行錯誤を繰り返しているのです。

長期記憶に残り続けるには

それでは、短期記憶として入ってきた情報が、忘れられずに残り続けるにはどのようにすればよいのでしょうか。

脳科学の研究では、そのメカニズムの解明も進んでいます。長期記憶に残り続けるためには、3つの記憶の方法があるそうです。

まず、ひとつめが「意味記憶」。
概念など一般的な知識から取り入れられる記憶のことで、「学習や反復」によって深まる記憶です。学生時代、単語帳や暗記シートを使った経験はないでしょうか。当時は漢字の書き取りの宿題に「なんの意味があるのだろう」と思っていましたが、繰り返して「読む」「書く」ことによる反復が、長期記憶に繋がっていたのですね。

ふたつめは、「手続き記憶」です。
ひとつめの「意味記憶」と同じく、こちらも反復によって記憶されますが、「意味記憶」と異なるのは、「意識しなくても使える」という点です。例えば、「お箸の使い方」や「自転車の乗り方」がこれにあたります。英単語や歴史年号など、思い出そうとすれば出てくる「意味記憶」に対して、お箸や自転車は使い方を思い出さなくても扱えますよね。

そして、3つめの記憶の方法が、マーケティングに最も重要な「エピソード記憶」です。
これは、時間(過去)や空間(離れた場所)などを隔てて、個人が経験した出来事に関する記憶のことです。要するに「思い出」ですね。

この「エピソード記憶」のメカニズムは、新たな長期記憶を生み出す役割も果たします。人間の記憶が長期記憶として保存されやすくなるためには、既に記憶の中にある別の記憶と紐づけると良いと言われています。
ということは、多くの人の頭の中にある「別の記憶」が何であるかを知り、それに関連したメッセージを発信すれば、記憶に残りやすいということになるわけです。

コミュニティで記憶に残る「体験」をつくる

「別の記憶」の組み合わせは、企業側から能動的に提供することも可能だと思います。

広告などの一方的な情報発信だけでなく、お客様が主体的に参加するようなイベントなどの「体験」がそれにあたります。コミュニティ内でのさまざまな企画も、「体験」として記憶を積み上げる場になるでしょう。

自分の興味のあるテーマは、興味を持っているという時点で、すでに何らかの関連する「エピソード記憶」が出来上がっているもの。すでに出来上がっている記憶の上に新しい体験が積み上がれば、場を提供する企業はもちろん、その企業の商品・サービスをさらに身近に感じてもらえるのではないでしょうか。このように、記憶のメカニズムからも、顧客と企業の関係づくりを行うことができるのです。

私が前職のカゴメ時代に携わっていたコミュニティ「&KAGOME」における例を紹介します。長い歴史のある企業なので、ロングセラー商品がたくさんあります。このロングセラー商品にまつわるエピソードを定期的に募集していたのですが、特に手応えがあったのが、2016年に実施したテーマ「ケチャップのこだわり、思い出教えて」です。

このテーマには、オムライスやハンバーグ、ナポリタンなど、日常の食事メニューに関するさまざまなエピソードが寄せられました。中には、「幼稚園の頃のお弁当にナポリタンが入っていた」「オムライスにハートの絵を描いた」といった、ほっこりする投稿も。

このように、企業が発売する商品やサービス、またそれにまつわる出来事は、お客様の頭の中に何らかの「思い出」として残っているのです。そうした思い出に現在の話題を関連付けて発信することで、受け手は「わが事」として受け入れ、記憶に残りやすくなるのです。

ちなみに、この「思い出テーマ」は、その後も「&KAGOME」で定期的に開催されていて、2022年12月には、「あなたが選ぶ!カゴメ商品アワード2022☆実施中!」という企画が盛り上がっていました。心あたたまる思い出がたくさん寄せられますし、投稿されたコメントで特集ページを作ることもできる、良い企画だと思いました。みなさんも参考にしてみてください!

「ちょっといい話」第13回まとめ

今回取り上げた「記憶のメカニズム」は、一見脳科学や心理学の世界に感じますが、お客様の行動を捉えるのに意外と重要な要素です。私も書籍などから情報収集して、勉強になりました。

企業からの一方的な情報発信ではなく、記憶のメカニズムを応用できるコミュニティのようなオンラインツールによって、顧客と企業の関係づくりが可能になっているのですね。