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なぜ「口コミ」は信用できるのか?コミュニティが果たす重要な役割と口コミ効果

口コミ効果と信憑性評価の心理

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。

「行動喚起」をテーマとした前回のコラムでは、企業が仕掛けた行動喚起策を、SNSやコミュニティを活用して情報拡散するマーケティングについて触れてみました。
その中で、関西学院大学の森一彦教授の論文を参考に、共感を生み行動変容を起こすのは、情報の送り手(企業)と受け手(SNSフォロ ワーやコミュニティ会員)の相互作用 が寄与していると解説しました。

この相互作用、SNSやコミュニティで考えると、いわゆる「口コミ効果」が寄与していると言えます。当事者よりも第三者から発信された情報を信じやすいという心理効果は「ウィンザー効果」と呼ばれ、マーケティング戦略に用いられることも少なくありません。とはいえ、それも時と場合によるのでしょうか。

日本トレンドリサーチを運営するNEXERが2022年11月に行った調査では、ネット上にある口コミを「まったく信用していない」「あまり信用していない」の合計は 56.5%にのぼり、「とても信用している」「やや信用している」の 43.4%を上回る結果が出ています。

日本トレンドリサーチ,「【口コミどれほど信じる?】56.5%が、ネット上にある口コミを「信用していない」」,https://trend-research.jp/16273/,(2023年2月15日)

調査結果で上回ったと言っても、五分五分といった傾向ではないでしょうか?

私も通販サイト🛒を利用するとき、レビューを参考にすることがあります。また最近重宝しているのがYouTubeの体験レビュー動画で、新しく大きな買い物をする場合にかなり役立ちます。その際のレビューの信憑性を評価するのは、サイトのつくりや書き込みのトーンなど、投稿者の人となり(会ったこともないのですが)が影響していると感じます。

口コミが信憑性を増すのはなぜか?

社会学・経済学などには、「バンドワゴン効果」という理論があります。これは、ある選択肢が多数の人に支持されている現象が、その選択肢を選ぶ者をさらに増大させる効果のことを指します。要するに、「みんながやっていることは価値があり、信用できる」という心理のことです。

選挙において優勢と報じられた候補者に票が集まるとか、すぐに売り切れてしまう商品の人気がさらに高まるといった事例があげられます。
このバンドワゴン効果の理論を口コミに応用すると、多数のユーザーが「いいね!」や「転送(Twitterで言うリツイート)」を行う投稿は、信憑性が高く見えるということになりますね。

もうひとつ、別の視点で口コミの信頼度を考察してみましょう。それは、発信者の属性が持つ信頼度です。見ず知らずの人が投稿した YouTube動画よりも、身近な友人や同僚からの体験談の方が信頼度は増すでしょう。また、大学教授、医師、弁護士など、専門知識を持ったいわゆる識者の発信が信用できるのは当然ですね。企業からの発信についても、その分野の専門家のお墨付きをもらうなど、第三者を通じて魅力が語られることで、信頼度が増す1つの要因になります。

余談ですが、企業からの発信では商品・サービスなどの機能面だけでなく、ヴィジョンや事業姿勢、歴史、社会的意義といったストーリーも含めて、積極的に発信し続けることが重要と言えるでしょう。

コミュニティが高める情報の信頼性

企業が発信する情報の信頼度を高めるのに一役買うのが企業コミュニティです。コーポレートサイトを補足する役割として企業の取り組み姿勢を発信する場であるだけでなく、第三者であるコミュニティ会員からの双方向の発信によって情報の信頼度は増します
コミュニティ自体が一定の規模以上となり、その存在自体が外部に知れわたれば、バンドワゴン効果も期待できるでしょう。

具体的な例をあげてみますね。BtoBの事例となりますが、世界的🌏なITのプラットフォーマーは、契約企業へのサービスの一環として「ユーザー会」と称するコミュニティを多く運営しています。セールスフォース・ドットコム社は、「Salesforce Trailblazer Community」を運営し、ユーザー相互の情報交換の場を提供しています(メンバー数は9,500人 2023年2月時点)。また、BIツールのタブロー社は、「Japan Tableau User Group」を運営しています(フォロワー数は3,000人 2023年2月時点)。

私が実際に参加したユーザー会で、特に印象深かった活動をひとつご紹介します。デジタルマーケティングで利用されるCDP(カスタマーデータプラットフォーム)のソリューションベンダーのトレジャーデータ社が定期的に開催しているイベント「PLAZMA」の2020年5月セッションの1コマです。

セッションタイトルは、「\集まれTD(トレジャーデータ)の森/TDユーザー会 PLAZMA殴り込み編 ~ TDのことはTD社員より俺たちに聞け!~ 」。SUBARU・アサヒビール・ソフトバンクなど、実際にトレジャーデータを利用している企業のマーケッターが登壇し、メリットもデメリットも包み隠さず語っていました。
コミュニティ運営が、その企業の信頼性を高める好事例であると感じ、現在でも印象に残っています。

「ちょっといい話」第12回まとめ

世の中には情報が溢れており、信憑性の低いものも多く含まれています。私たちは、たくさんの情報の中から、自分に必要な情報を効率よく取捨選択しないといけません。

今回のコラムでは、無意識のうちに私たちが信頼できる情報を選び分けている根拠を、心理学や社会学、さまざまな調査結果、事例から紐解いてみました。
企業が発信する情報の信頼性を高めるのに、コミュニティが有効であることもお分かりいただけたのではないでしょうか?また、間接的ではありますが、コミュニティを運営する効果のひとつとして確認できたのではないかと思います。