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山口県長門に移住する(15):大家になる

購入した土地には、アパートが建っていたので、
売買契約が成立したその日から、
私は、大家になった。

まずは、賃借人への挨拶だ。
と、いっても、お一人だけ。

10室あるアパートの内、
9室は随分前から、空き室になっていて、
残る1室に、Yさんという男性が、
ひとりでお住まいだった。

Yさんにご挨拶に伺い、
家主が変わったこと、
建物の老朽化が酷いので、
1年後にアパートを廃業し、
大幅なリノベーションか、解体工事が
始まることをお伝えしなければならない。

つまり、
この先1年の間に、退去してください、
という、お願いをすることになる。

ひとりっきりでは、心許ないので、
いつもお世話になっている、
まちの先輩と、友人に同伴してもらった。

友人が、Yさんと顔見知りだったこともあって、
会話は穏やかに進んだ。
が、「1年以内に退去」、には驚かれた。
50年来そのアパートにお住まいだったから、
当然だろう。

近所の方々は、Yさんが頑固で、
「簡単には出て行ってくれないよ」と、
仰っていたので、ますます不安が募る。

最初の試練がやって来た(^◇^;)

が、心配ばかりしていても、何も進まない。
Yさんに気持ち良く退去していただくのが、
私の最初の仕事。
気長に、誠実に対応するしかない、
と、覚悟を決めた。

それから、頻繁にYさんを尋ねた。
家賃の集金や、お裾分けを持って行ったり、
ご機嫌伺いに伺ったり。

Yさんは、いつも快く出迎えて下さって、
色々、ご自分の事を話して下さった。

福岡の飯塚に、弟さんがいらっしゃること、
お酒もタバコもやらないけど、ダンスが得意で、
教えていた時期もあったこと。
昔は、やんちゃなことも数々したこと。

ある日、Yさんに、
「あんた、ヒヨコ食べる?」と尋ねられた。
ヒヨコ!
私は、お肉をほとんど食べない、
まして、ヒヨコなど食べたことがない。

Yさんにそう言うと、
「そのヒヨコやのうて、これや」と
ひよこ饅頭の箱を差し出された。
二人で大笑いした。

そうして、Yさんと徐々に親しくなり、
転居先を提案したりもしたが、
退去して下さる気配が、一向にない。
猶予期限が、1ヶ月を切っても、
転居先が決まらなかった。

続きは、又明日。

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