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山口県長門に移住する(20):解体終わる

2棟のアパートが解体されると、
風景が一変した。

眺望が開け、
川向こうの山や
山辺に建つ旅館がよく見える。
「スッキリしたね〜」
とまちの人もおっしゃるから、
何も建てずに、このままにしておこうかな
と、思ったりする。

古くて、痛みの酷かった文化住宅は、
ある人にとっては、目障りな代物で、
ある人にとっては、哀愁溢れる建物だっただろうし、
他の人にとっては、有って無いような、
単なる風景の一部、だったのだろう。

解体する前の罪悪感は、
解体中には最高潮になった。

崩されつつある建物を見ると、
胸が痛んだ。
大きな木が倒され、
アジサイ、センリョウ、ツワブキも
無くなった。

自然が好き、って、
普段言ってるくせに、
ナントイウ、偽善。

罪滅ぼし、というより、
自分を慰めるために、
お酒を撒いたり、奉ったりした。

あの場所に、私ほど執着した人は、
他にいなかったかも知れない。
執着が、愛着に変わったのは、いつだろう?

あの場所に惚れ込んでから、
Fアパートの写真をたくさん撮った。

購入前は、毎日、毎日、傍を通る度に、
どうか、ここが手に入りますように、と願い、
登記が変わった後も、毎日挨拶を交わし、
しげしげ通っては、草抜きをしたり、
唯々、眺めを楽しんだりした。

暮らしたこともないFアパートと
川辺にある不整形の土地が、
私の中で、懐かしい場所になった。

Fアパートを解体したのは、私で、
Fアパートは、跡形もなくなってしまったけれど、
懐かしいあの文化住宅は、
私の中に今も建っている。

これからも、ずっと。

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