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『エルフの工房物語』スマホカバー5

「アンティークなミシンで仕上げた革細工は、それはそれで味がある仕上がりとなるといいますか、製品や素材次第では、ミシンも十分選択肢になりますし、いつかは、手を出したくもあるんですが、……お金が」
「な、なるほど」

 ……そういう世知辛い問題も入ってるとは知らなかったが、貴史は、そこはもうつっこまず、ただだまって彼女の熟練の技を見続けて、
 そうして、スマホケースが出来上がった時には、
 それを買う事に疑問すら抱かず、壊れたスマホケースの代わりに、早速、それをスマホに纏わせた。
 ――そして
 店である家の前、エルフが見送り。

「あの、色々ありがとうございましたっす」
「いえ、こちらこそ、お客様とお話出来て良い息抜きになりました」
「ああ」
「それでは、これで」

 そう言ってエルフは頭を下げて、家の中に戻ろうとする、
 ……貴史は、

「あ、あの!」

 思わず呼び止めて、

「なんで、お姉さんはエルフなんですか!」

 マヌケなようにみえて、一番気になった事、
 どうしてこんな所に店があったか、
 どうして革細工の店なのか、
 どうして、
 エルフがここにいるのか、
 返ってきた、
 答えは、

「私の名前は、カリーナ」

 彼女の名と、

ここは、革細工工房elfenworks

 店の名前、
 それだけ告げて、

「またのお越しをお待ちしています」

 彼女は、再度、一礼した。

 ――スマホのアラーム
 気付けば貴史は、家のベッドで寝ていて、
 夢だったか? と、慌て起き上がって、みれば、
 ……上司に壊されたスマホケースに代わり、すっと、毎日肌身離さぬものを、しっかり包み、守るものが、
 スマホカバーに包まれたスマートフォンが、目覚めたばかりの瞳に映った。

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「……」

 それを掴む、手触りは良い。スマホの画面のアラームをオフにしてから、彼は、
 エルフのカリーナがそうしたように、自分の肌に、スマホカバーをあてた。

「……いい買い物したよな」

 ――革製品は使えば使う程、色合いが深みを増すんですよ
 作業中に言っていた、エイジングという概念。これから毎日使うものが、自分と供に変化していく事を思うと、貴史は、ちょっぴり楽しくなって、
 また店へ行けたらいいなと考えながら、ご飯を食べようと、スマホを片手に台所へ向かった。


著:アサムラコウ
原案:にじの
Elfenworks
 Creema店:https://www.creema.jp/c/elfenworks
 

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