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『エルフの工房物語』スマホカバー2


「ごめんなさい、今、ちょうど仕上げをしていまして」

 振り返る、
 彼は、思わず目を見張り、息を呑んだ。
 そこに板のは美しい金髪の女性――
 だが、それだけじゃない。

「ようこそ」


 耳がまるで風を受けた深緑の葉のように尖っている。

「ようこそ、革細工工房Elfenworksへ」

 ファンタジーでしか見た事の無いエルフが、目の前に立っていた。


 金髪のショートカット、丸く蒼い瞳、髪を左右に分けてる事で覗く、額の眩しさ、美しさ、
 そんな事よりも何よりも、耳が尖っている。
 また、いでたちの方も、白いシャツに落ち着いた色合いをした赤のタイをつけ、ベストを重ね、その上から緑のローブを羽織った服装だった。現代社会なら、コスプレと呼ばれても仕方ないファッションである。

「……」

 言葉を失う。
 上司との飲みで、なかなか覚めなかった酔いが、無くなっていくような感覚すら覚える。
 だが、彼女は、にっこりと笑って、

「ごめんなさい、最近はインターネットの通販が主役で、店頭に並べているのはあれくらいですが」

 インターネット? エルフがそれをやってる事に疑問を覚えたが、それを聞く前に、彼女は、指まで美しい手の平で、窓際の棚を指した。
 そこに並ぶものをみて、本当、ついさっき彼女、このエルフが言った事を思い出す、
 革細工の店――
 そこには、商品らしき何かが、僅かながら並んでいた。けど、
 それをじっくり見る前に、

「い、いや!」

 革細工、バッグや財布、高級品、普通のサラリーマンには縁遠い一品、

「オレにはもったいないもんばっかりなんで!」

 そう言った、そう判断した。
 そう言って、慌て、店を出ようと、後ずさりでドアの方へ向かってる時、
 商品が並ぶ棚が、視界の右端に入って、そこに、

「へ?」

 今最も必要とするもの、

「スマホケース?」

 それを、見つけた。

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