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『エルフの工房物語』マスク&ポーチ5

「カーキとキャメル買います、あと、マスクケースも見せてくださいっ!」

 そう、エルフに告げれば、
 彼女は長い耳を揺らしながら、嬉しそうに笑った。
 ——買い物終えて十分後

「ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

 互いに礼を言い合って、頭を下げあう。そうして亜子は店を出て行く、
 その前に、

「……あの、店長さんって、エルフなんですか」

 そのものズバリ、聞いてみた。

「はい」

 あっさりと肯定する。

「……ここって、日本ですよね?」
「そうかも」
「そ、そうかも?」
「……お客様がまた必要になれば、また、この店へ訪れる事が出来ます」
「いや、そんな、それじゃあまるで魔法と一緒で」
「ありがとうございました」
「え、ちょっと」

 彼女が手を伸ばした瞬間、

「……あれ」

 彼女は、街で、立っていた。
 ……ちょうど自分が、木々の入り口を見つけた所である。
 今までずっと立ったまま夢でも見ていたとでもいうのか? そう思ったけど、
 ……手にはしっかり、買ったマスク。

「……ふぇっくしょん!」

 くしゃみが出た。
 さっきまで出ていなかったのに。あの店には杉花粉なんてものがなかったのだろうか。
 それじゃあやっぱり、日本じゃなくて、
 いやでも、日本語喋ってて、素材も国産にこだわって、

「……」

 色々考えたけど、

「まぁいいか」

 そう唱えた後彼女は、袋から、カーキのマスクを取り出し、元々の使い捨てのマスクの上から付けてみた。
 自分で自分の顔を見られる訳じゃないけど、陽光煌めく季節の中、その色を身につけた自分を想像すると、少し嬉しくて、彼女は家を出た時よりは弾む気持ちで、ドラッグストアに歩いていった。

■Creema
https://www.creema.jp/c/elfenworks


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